土曜日生まれは腰痛持ち

2008年02月18日(月) ひとりリレー小説「お弁当持って」第2話/その他、雑記

(第1話【2月9日分】あらすじ)
模擬試験の朝、寝坊をしてしまった「私」。
まだ大急ぎすれば遅刻を免れる時間ではあったが、
前夜から仕込みをした弁当食材をむだにするのがはばかられ、
高校入学以来初めて学校をサボってしまう。


小心者が時々非常に大胆になることは、
多分みんな知っていることだ。
なぜなら大抵の人は、自分の小心ぶりを気にやむことで、
ライフタイムの2割は費やしているだろうから。
そして、その大胆な振る舞いが全く長続きしないことも
悲しいかな、経験として知っているものだ。

「何時になったらこの携帯鳴るかな」
余裕しゃくしゃくでディスプレーを覗き込む時間は、
情けないほど短かった。
バックライトがぱっと消えて、待受画面が見えなくなった途端、
私は、今まで全く知らなかった
「取り返しがつかない感」を味わうことになる。
担任である「ゴンさん」こと権藤先生の番号もアドレスも
メモリーに入ってはいたが、
多分、校内では電源が切られているか、
留守電モードになっているかだろう。

私たちの高校は、
生徒の携帯電話持ち込みは許可されているが、
校内では原則として電源を切り、
通話などが必要なときは、休憩時間に昇降口で行うと決まっている。
とはいっても実際には、サイレント状態のマナーモードにして
電源を入れっ放しにしている生徒も結構いる。
しかも、まだ始業(というかテスト開始)前なので、
うまく滑り込めれば、何とか「連絡」がつくはずだ。
私は、生真面目に電源を切っているであろうゴンさんに、ではなく、
同じクラスで一番仲のいい瑛子にメールを入れることにした。

「今日体調が悪いので休みますって、ゴンさんに伝えてくれない?」
瑛子は勉強ができるだけでなく、察しもいい子である。
深く詮議するでなく、「わかった。お大事に」の一言だけ返してきた。

もともと胃腸系が弱点である私は、瑛子の返信を読んだ途端、
複雑な安堵感からお腹が緩み出した。
これである意味、仮病ではなくなったとも言えるのだが、
自分としては、ごくごく日常的な「くだし」にすぎなかった。

一応の連絡も済ませ、トイレにも行くと、
部屋の中に澱んでいたものが何かにかき混ぜられたみたいな、
何ともいえない空気を感じた。
今日1日、私には思わぬ休暇ができたのだ。
決して胸を張れることではないが、
ほかならぬ自力でつかみとった休暇である。

とにかく、米を炊くことにした。
たっぷり水を吸い過ぎたので、うまく炊けるかわからないが、
何しろこのままでは、朝ご飯もお預けをくらっている状態である。

フライパンに油を敷いて、
コロッケの表面に焦げ目をつけるように揚げた。
油の処理が結構面倒なので、揚げ物はよくこの方法を使う。

唐揚げなど、内部への火の通りが心配なものに関しては、
さらにオーブントースターにかけることもある。
そうすると、お昼に食べるころには、
すっかり冷めて固くなっているのだが、
朝、トースターの天板を取り出したときに見た、
じゅう、じゅーうという、いわゆるシズル音を思い出すと、
「記憶」が結構おかずになったりするのだ。

朝御飯用の味噌汁を、昼の分まで多目に作ってみた。
近所のスーパーで5枚298円だったサンマのみりん干しを
1枚だけ焼いて、
作っておいた切干大根の炒煮と一緒に朝ご飯のおかずにする。

お昼はやっぱり、いつもの弁当箱に詰めたい。
せんキャベツを少しだけ敷いた上にコロッケを載せ、
切干大根は、汁をしっかり切らなければいけない。
98円でたっぷり300グラムも入った柴漬けは、
いかにも安っぽい色と味だが、妙に口に合う。
高校卒業と、柴漬けを1袋使い切るのと、どちらが先だろう。
柴漬けの方が長く居座って、
1年ぐらい留年しないと釣り合わないかもしれない。

とんでもない理由で学校をサボった日は、
さらにシャレにならないことを考えてしまうものなのか。

御飯は40分弱で炊けた。
立ちのぼる湯気の匂いは悪くないけれど、
食味や舌触りは保証の限りでない。
5分ほど蒸らしてから杓文字を入れると、
そう悪くもなさそうだった。

今日はたまたま模擬試験だったが、
そもそも私の学校は、
土曜日でも自主学習の名目で登校することが多いので、
土曜朝9時台にやっているテレビ番組を見ることはない。
テーブルセッティングをして、スイッチ入れると、
全国区の割に首都圏しか扱わない情報番組が始まり、
初めて見る女性タレントたちが、
今売れている小説を書いたお笑い芸人にインタビューしたり、
美しいスイーツを頬張ったりしていた。
17年生きてきて、毎日まじめに勉強していても、
知らないことってたくさんあるなあと感心する。

さっき覗いた携帯のディスプレーの端っこに、
天気予報の「晴れ」マークが出ていたような記憶がある。
窓辺の遮光カーテンを開け、部屋の電気を消してみると、
私のサボりの理由は、実はコレだったかと勘違いされそうなほど、
淡く鮮やかな水色の、透き通った冬の晴れ空が見えた。

(第2話 了)

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ここ「エンピツ」は、使い勝手が悪くないので
6年の長きにわたってお世話になっているのですが、
1日に1本しか書けないのが、難といえば難でしょうか。
上記の「第2話」をアップしたのが
夜中の2時ぐらいだったのですが、
今、午後4時10分です。
家族を起こし、飯を出し、弁当を持たせ、
下の娘に宿題が終わった後におやつを出し、
振り返れば、
自分が食べるんでもない食べ物に今日だけで3回もかかわった、
もうそんな時間です。

昨日は『爆笑レッドカーペット』のOAもありました。
正直、何か畑違いの有名人がいろいろ出てきて
微妙に見当違いな感想を述べ合うという、
往年の「ボキャブラ天国」的なにおいは否めないものの、
毎回楽しみにしている企画です。
誤解のないようにつけ加えますが、
ゲストは皆さん、きっと「いい人」なんですよね。
まじめに答えていらっしゃるもんなあ。
正直、それが「いらんっ!」のですが


連覇にして最新、最新にして連覇のR−1王者なだぎさんは、
今回は、演芸大会に参加するおっさんの体で
R−1と同じ「ややこしや〜」ネタを披露していました。
○○と○○が似ていて見分けつかない、という発想自体は
昨年のディランネタと同じようなものだし、
偏になだぎさんのキャラ勝負みたいなところはあるのですが、
おっさんのスーツの番号札が「90210」になっていたのが笑えました。
封印した(と、本人が言ったのかは不明)ディランは、
まだおっさんの胸元にいた!ということで。
ディランのモトネタになった
『ビバリーヒルズ高校白書』及び『青春白書』の原題は
『Beverly Hills 90210』で、90210はビバリーヒルズの郵便番号


世界のナベアツことあつむさんは、
ネタそのものよりも、司会の今田さんが2人がかりで
相方山下さんの持ちネタ(と言っていいのか)である
「OMORO」を流行らせよう?としているのを見て、
何とも切なくなりました。
「やりすぎコージー」の「ケータイ大喜利」コラボ企画のとき、
そのあまりのしょーもなさのため、
仕切りのバッファロー吾郎・木村さんに
「2,000円あげるから帰って」とまで言われた山下さんですが、
実のところ、相方にも先輩にも恵まれてます。
正直、ジャリズムまた解散すればいいのにと、
大阪時代の2人のことを何も知らんくせに思っていたのですが、
「もう、2人で行けるとこまで行ってちょうだい」
という気持ちにだんだんなってきました。
自分と同じ1968年生まれの芸人は不作という印象もあるので、
そういう意味でも頑張ってほしいなと。


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