六本木のバーで、上司と二人で終電まで飲んだ。
その上司というのは社のトップ、つまり会長さま(エライ)な訳なのだが 何を隠そうヒラのアタシは、入社以来、この人物が最も苦手であった。 灘高→東大工学部→某省のキャリア。見るからに秀才然として冷めた風貌。 言葉の端々に英語が混じるし。何を言ってもまず否定語が返ってくるし。 アメリカナイズな合理性一点張り。そしてトドメに、この人B型だし…。 こんなにソリの合わない人ってそういない、と頭から決め込んでいたため 話しかけられるたび必要以上に緊張し、思い切り身構えたものである。
残業している時、この会長も背後で何やらゴソゴソ資料をかき回していたが アタシは心頭滅却、アウトオブ眼中、存在黙殺、とばかりに背を向けて 1分でも早く帰ってやろうと山積の書類を前に焦りまくっていた(情けない奴)。 『どう。もう終われそう?』 (��_��;)ン? Σ( ̄ロ ̄;)は、あ、ええ!もっもう帰りますっ!(^◇^;)ノ 『じゃあメシ食いに行こう』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?σ(・_・?)
うわあ。やだ。冗談でしょう………(-。-;)
呆然としていると、サラリーマンで賑わう小料理屋に連れてこられていた。 こうなったらヤケだわ。わき目もふらずに食べて、うんと酔っ払ってやるわ。 で、気が付くと、やたらクールで理解不能の宇宙人だとばかり思っていた会長は 座敷で靴下を脱ぎ、下らない話にケラケラ馬鹿笑いしてるし、アタシはアタシで 酔いに任せて滑舌になりベラベラ喋り倒していた。なんでこーなるの。 おあいそを済ませると(オゴリかと思ったら千円払わされた)、もう少し飲もうか ということになり、はぁとか言いながらタクシーで六本木に向かった。
バーでは双方幾分酔いも醒め、仕事の話題やら何やらで、結構マジメくさって 話し込んでいたように思う。ふと時計を見たら12時をとうに過ぎていた。 どうしよう、まだ月曜日なのに。明日はみっちりスケジュール詰まってるのに。 しのつく小雨の夜の街を縫い、ほろ酔いで気持ち良さげな会長のあとについて 地下鉄の駅までとぼとぼ歩きながら、アタシはこれまでの短い人生において 第一印象や先入観というものだけを頼みに、どれほど多くの人々との関りを 無下に拒み続けてきたのだろうか、と恐ろしく神妙な気持ちになっていた。
『あなたが来てから…オフィスはビシッと片付いて…仕事も無理させたけど… 毎日本当によくやってくれるんで…身体だけは気を付けて…』 おしまいの言葉はフェイドアウトしていたが、最後に『どうもありがとう』 と深々頭を下げられた時はすっかりたまげてしまい、こちらこそ今まで 理由もなく毛嫌いしててごめんなさい、なんて思わず口を滑らせそうになった。 明日もあさっても会社で顔を合わせるのに、改札の前で互いに仰々しい挨拶を 交わし、それぞれの家路についた。もう眠さのピークで死にそうだった。
とって食われる訳ではないし、まあ思っていたよりいい人で良かった(~_~;)
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