みちる草紙

2002年06月24日(月) 霧雨の六本木

六本木のバーで、上司と二人で終電まで飲んだ。

その上司というのは社のトップ、つまり会長さま(エライ)な訳なのだが
何を隠そうヒラのアタシは、入社以来、この人物が最も苦手であった。
灘高→東大工学部→某省のキャリア。見るからに秀才然として冷めた風貌。
言葉の端々に英語が混じるし。何を言ってもまず否定語が返ってくるし。
アメリカナイズな合理性一点張り。そしてトドメに、この人B型だし…。
こんなにソリの合わない人ってそういない、と頭から決め込んでいたため
話しかけられるたび必要以上に緊張し、思い切り身構えたものである。

残業している時、この会長も背後で何やらゴソゴソ資料をかき回していたが
アタシは心頭滅却、アウトオブ眼中、存在黙殺、とばかりに背を向けて
1分でも早く帰ってやろうと山積の書類を前に焦りまくっていた(情けない奴)。
『どう。もう終われそう?』
(��_��;)ン? Σ( ̄ロ ̄;)は、あ、ええ!もっもう帰りますっ!(^◇^;)ノ
『じゃあメシ食いに行こう』
・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?σ(・_・?)

うわあ。やだ。冗談でしょう………(-。-;)

呆然としていると、サラリーマンで賑わう小料理屋に連れてこられていた。
こうなったらヤケだわ。わき目もふらずに食べて、うんと酔っ払ってやるわ。
で、気が付くと、やたらクールで理解不能の宇宙人だとばかり思っていた会長は
座敷で靴下を脱ぎ、下らない話にケラケラ馬鹿笑いしてるし、アタシはアタシで
酔いに任せて滑舌になりベラベラ喋り倒していた。なんでこーなるの。
おあいそを済ませると(オゴリかと思ったら千円払わされた)、もう少し飲もうか
ということになり、はぁとか言いながらタクシーで六本木に向かった。

バーでは双方幾分酔いも醒め、仕事の話題やら何やらで、結構マジメくさって
話し込んでいたように思う。ふと時計を見たら12時をとうに過ぎていた。
どうしよう、まだ月曜日なのに。明日はみっちりスケジュール詰まってるのに。
しのつく小雨の夜の街を縫い、ほろ酔いで気持ち良さげな会長のあとについて
地下鉄の駅までとぼとぼ歩きながら、アタシはこれまでの短い人生において
第一印象や先入観というものだけを頼みに、どれほど多くの人々との関りを
無下に拒み続けてきたのだろうか、と恐ろしく神妙な気持ちになっていた。

『あなたが来てから…オフィスはビシッと片付いて…仕事も無理させたけど…
毎日本当によくやってくれるんで…身体だけは気を付けて…』
おしまいの言葉はフェイドアウトしていたが、最後に『どうもありがとう』
と深々頭を下げられた時はすっかりたまげてしまい、こちらこそ今まで
理由もなく毛嫌いしててごめんなさい、なんて思わず口を滑らせそうになった。
明日もあさっても会社で顔を合わせるのに、改札の前で互いに仰々しい挨拶を
交わし、それぞれの家路についた。もう眠さのピークで死にそうだった。

とって食われる訳ではないし、まあ思っていたよりいい人で良かった(~_~;)


 < 過去  INDEX  未来 >


[“Transient Portrait” HOME]

↑みちる草紙に1票
My追加