台風が通過するというので、午前中は絶対にオフィスから出たくなかった。 窓の外は次第に雨足が強まっている。遥か下方を見ると、それでも外出しなければ ならなかった気の毒な傘の群れが、横殴りの豪雨の中、黒いアスファルトの上を 足早に行き交っている。こ〜んな雨の中歩いたら靴がダメになっちゃう〜(。-。-。)y-~~
電話が鳴った。いつもしちめんどくさい用事ばかり言いつける例の会長である。 でも今日は神戸に出張しており、一旦帰京しても所用を済ませたらその足で 小樽へ行ってしまうからまぁいいか。「はい、めいこです(。・。・。)」
『めいこさん、あのぅ、実はさ、すごく恐縮なお願いがあるんだけど。 あまりに恐縮なお願い過ぎて、お願いしながら恐縮してしまいそうなんだけど』 うわあ!めちゃくちゃイヤな予感!「…ど、どんなことでしょうか…(~_~;)」 『私、実は昨日財布を落としてしまってですね、こっち(神戸)にいる間は I(社長)にキャッシュを借りれたんですが、それで今から東京に戻る訳なんですが Mキャピタルに寄ってすぐその足で小樽に行かなきゃならないのに、なんと チケットを買うお金がないんですよ。カードも財布に入ったままだったんですよ。 …それで、あなたさぁ、今、俺に貸せるだけの現金、持ってる?』
…は、はああああああ????(^◇^;)
「銀行に行って下ろしてくれば、少しくらいありますけど…(-。-;)」 『まあ、そうだね、往復のチケット買って、ホテルに泊まって…だから 5〜6万、いやそれじゃちょっとキツイかな、7〜8万もあれば助かるんだけど』 「足りますか?それで。食事もすればタクシーもお使いになることだし(-。-;)」 『う〜〜〜〜〜〜ん』「…取りあえず、10万持って行きます…(-。-;)」
出先の同僚から電話が入ったので、これこれしかじかでオフィスをしばらく 空ける旨を話した。『お金貸しに行くんですか…』「ええ…」 よりによってこの天気の中を、雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ。ヒラはつらい…(-_-;)
13時ちょうどに東京駅に着く筈なので、出る時間を見計らっていると、またその 迷惑会長からの電話。『今熱海なんだけど、台風で運転を見合わせているから 13時に着ける可能性は皆無になったんですよ。まぁ動き出したらまた電話入れます』 このまま待機してろってか。もうお昼なんだけど。お弁当も買いに行けないじゃない。 しばらくして『あのねぇ、あなたMキャピタルの××さんの電話番号知ってる?』 「はい」『彼に電話をしてだね、私が今こういう状態で遅れる旨を伝えてだね、 それから…新幹線がどのくらい遅れて東京に着くかを調べて、私がお邪魔できる 時間を割り出して先方に伝えておいてくれる?お願いします。んじゃ』
・・・急ぎの仕事が他に山ほどあるのに・・・σ(-_-;)
その後、新横浜に着いたという電話を受けてオフィスを出た時には、雨はすっかり 上がって晴れ間が見え、思った通り、湿気がムンムンと街を覆い尽くしていた。 新幹線はおよそ1時間遅れであった。汗ばみながら小走りで八重洲中央口に向かう。 しかし、いない!携帯にかけてみると留守番電話!おい#出ないかくそおやぢ! するとひょっこり『やあ、ありがとありがと。悪いねぇ〜』と横合いから現れると アタシが渡した封筒を無造作に胸ポケットに突っ込み『これは明日返すから!』と 言いながら、アタフタと人ごみに紛れて消えた。明日は厳しく取り立てよう。 暑さのせいか妙に息が上がって、溜め息ばかりがやたらに出る。
このお使いのせいで、またしてもあれとこれとは残業する羽目になったなぁ。 もと来た道を帰って行くアタシの後ろ姿は、とても寂しそうだったに違いない…。
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