何日かぼんやりと必死に暮らしてました。 ごはんを食べる以外は寝て、寝て、眠って、
そういえば病気になっていろんなことをあきらめたときに、あたしは言ったのね。
食べることと、眠ることと、 それから夢をみることくらいしかしない しょうもない生きものにあたしはなるね。
そのとおりの生活を始めています。 午前中起きて朝ごはん食べて薬のんで寝て 夕方おきて夜ごはん食べて薬のんで寝て。
しかしここに、誤算がひとつ。
睡眠薬で寝ちゃうと、 あんまり夢もみられないんだなあ…。 有言不実行でいやになっちゃう。
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そういえばバイト先の図書館をクビになりそうなことを匂わされました。 これは事件ですね、 特記事項です。 内心かなしかったみたいです。
だって、帰り道で 行きつけのファム・アジルというお嬢さんなお店で 青系の小花柄スカートに一目惚れしてお買い上げしたり 駅ビルの地下のスーパー(やっぱりデパ地下とは断固呼ばない!)で ハーゲンダッツの1パイントカップをお買い上げしてたから。
ちなみにアイスはストロベリーで、 当然パイナップルのミニカップもつけて。
だって好きなんだもん。 パイナップル。
先週誓ったんです。 ジェーンマープルの白のワンピース前にして お取り寄せしてもらった指輪前にして フェリシモから届いたうすみどりのジャケット前にして あたし誓ったんです。
「あたしがんばる負けない!お洋服はもう買わない!」
……ほんとに有言不実行ね。
だけど考えてみたら明日まで生きのびてゆかなきゃと思ってる人間が 夏のころに病気の酷さに耐えかねて死ぬ死ぬって叫んでいるんじゃないかって 今からこわがっているような人間が どうして夏以降の契約更新ができないことをそんなに心悩む義理があるのさ。 くだらないことでくよくよ悩むんじゃないあたし。
それよりか明日を生きのびなさい。
というわけで翌日もごはん食べて薬のんで寝たし ネットでひとめぼれしたお洋服制作サイトの管理人さんに ワンピースについてのお問い合わせメールを一生懸命書いたりするし コムサのブラウスの購入を検討しつつ 残された勤務日を勤めあげるべく薬をあおりながら電車に乗って 溜まっていた新着雑誌の面倒を、ばしばし見まくりました。
そう、今更なんだけど、バイト先は大学図書館なんです。
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きのう、朝起きたら枕もとにはさみがころがっていて ついでに血でよごれたティッシュも散らばっていて ああそういうことか、と なんとなく納得して左腕をみました。 十本だか二十本だか数えられない引っ掻き傷がいっぱいあって 血がかわいていたり肉が見えたりしていました。
でもそれだけです。
こっこが大好きです。
「しずかに席を立ってはさみを握り締めて、おさげを切り落とした」 「髪がなくて今度は腕を切ってみた、切れるだけ切った」
彼女はこんなうたを作るひとで あたしはそのこっこが大好きです。
でも、それだけです。
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うちに帰ってきたらメールが届いていました。 昔むかしあたしと恋人だったような人で ある日あっさりといなくなりました。 理由はたぶん、あたしたちがとてもよく似ていたからだと思います。 さびしいと感じるその理由とか言葉とかシチュエーションとか 使う言葉が全然違うくせに、同時にものすごくよく似ていた。
たとえばそのひとは、あたしのことを「ごーすと」と呼びました。 正確に言えばそのひとは自分のことを「ごーすと」と呼んでいて あたしが自分とおなじ「ごーすと」だったらいいと願っていたのかも知れない。
あたしはそのひとに尋ねました。 「ごーすとが寄り集まったら何ができるの?」
そのひとは言いました。 「すこし、さみしくなくなるかもしれない。」
あたしはそのひとの描く絵が好きでした。 そのひとの描く言葉も好きでした。 そのひともやっぱり あたしの描く絵が好きらしく あたしの描く言葉も好きみたいでした。 だけどさっぱりそれ以上に近づくことはできませんでした。
たとえば、似すぎているということは、そういうふうなことだと思います。
きれいな別れなんて存在しないと漠然と思っていたとおり、 あたしたちはぐちゃぐちゃの別れかたをして さみしいもさみしくないも死にたいも生きて痛いも わからない場所にあっちとこっちにサヨナラしてゼロになり あたしは物を言わなくなって多摩川と中央線が嫌いになりました。
その日から何百日も何千日もたって 何食わぬ顔をしてあたしたちはまた出会ってみたら おそろしいことに何千日前と同じようにまだ 同じことばで喋りあえてしまいました。 おそろしいことに。 当然のことに。
物を言わないくせに帯電していくニョロニョロみたいに あたしたちは同じ場所にいるのかも知れません。 ムーミンの世界にいる、まっしろなおばけ。 ふだんはひとりきりで生きていて 一年にいっぺんだけ集まってきて雷を呼んで同じことばを叫ぶ 同じ電気をおびた生きもの。
あたしはやっぱり「ごーすと」みたいでした。 そのひともやっぱり「ごーすと」みたいでした。 世界のあっちとこっちで 無言で、でもおんなじ電気を帯びているみたいでした。 少なくともそのひとはそう言って寄越したし あたしもそう思います。もしくはそう錯覚しています。
でもそれでも、二度と手をつながない。
あたしの左腕にはいっぱい傷跡があります。 古いのも新しいのも、血が出ちゃうのも消えなくなったらしいのも 湿疹あとに紛れ込んじゃってるのも はさみもかみそりも自分の爪あとも三角定規も小刀も とにかく新旧とりまぜていっぱいのそれだけの線があって なんだか自分でもよくわかりません。
ただ、あのひとが理由でつけた傷はひとつもありません。
それだからたぶん あたしはあのひとの手を離して もう二度と つなごうとはしないのです。
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気がついたら5日ほど放置してました… それでもカウンタが回ったり 投票ぼたんの数字が増えていることに、感謝したり。
ありがとうございました。
名前のとなりの[MAIL]からメールフォームに行けます。 お手紙いただけたらうれしいです。 それが別にやさしいことばでなくても 自傷なんて甘えてんじゃねー!というお叱りでも、抗議でも。 全然関係のないただのおしゃべりでも、 どこから届くことばって、あたしにはひとつのたからもの、そう思うから。
投票ぼたんはね おこがましいけど、押していただけたらすごくうれしいです。 ぽちって、ひとつきり、 それで明日を生きのびていくためのあたしの勇気が ひとつ増えてくみたいです。
それじゃあ、
どうぞ、お元気で
おだいじに。
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