睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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時間がかかりすぎたようで、新郎側がざわめきだした。 「念入りに、お化粧なさってますから、もう少しお待ちくださいませ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」いつものキンキン声が響いている。 「もう!!高飛車でいやです、あのお客さん!!」 「耳元で叫ばないでヨ。花。」 「だって、結婚ってだいじなことなんですよ。急がせてどうするんですか。心がゆれるんですよ。いざとなったら。」ブツブツ言いながら、花は忙しそうに去っていった。 「少し手伝ってくれませんか?」主人に呼ばれた。 「僕が何を?」主人はいつもの含み笑いのまま、歩き出した。 宿の裏の川まで降りていくと、主人は座り込み川を眺め始めた。ただ、眺めているだけだった。
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