マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 (日記) どう寄り添えばいいのだろうか・・・・・・。


先週はじめ、二年前に喉頭癌の手術をうけた腐れ縁の悪友【修】から電話がかかってきた。
修はつい先日、術後二年目の定期検診を終えたばかりなのだが、検査の結果が出て、肺に癌が転移していて、後半年の命と医師に宣告されてしまったみたいなのだ。

かなり酔っていたらしく、呂律も回っていなかったので、所々聞き取れなかったのだが、いつもピエロのように面白い事を言って人を笑わせてばかりいた修が、まるで無防備な赤ん坊のように「もう無理…。もう無理…」を繰り返しながら、電話口でヒーヒー泣きじゃくっていたのだ。

修はチョンマゲよりも数年長いくらいの付き合いなので、もう互いの性格の隅々まで解り合っているし、従兄弟のような存在である。
しかし、こんな時って、、親友の存在なんて無力も良いところだ。
下手に前向きな事を言って慰めてみても、励ましてみても、何の役にも立ちそうにない。

何事においてもそうだが、本人の立場に立たされてみて初めて、その恐怖感や絶望感や気持がわかるのだろうから……。
同じ種類の悩みや絶望には過去何度も苛まれてきた同士だが、こと健康に関しては、今のアタシは彼にとっては所詮健常者の高見の見物人でしかないのだから・・・・・・。

アタシタチは昔から本音で喧嘩したり、言いたい事を言い合ったり、世の中の偽造を皮肉ったりしてきた仲なので、どんな時でも、そんななおざりな慰め言葉など、お互いに掛け合っては来なかった。
アタシはただただ、電話口で「うん、うん、そうかそうか……怖いんだろうね……辛いだろうね……」と、オウム返しに繰り返すしか術がなかった。

そんな修が独り旅に出たと知り、しかも富士山の近くにいると知り、しかも昨日の夜は、アタシのメールに何の返信も入らずじまいだったので、アタシの心配は頂点に達していた。

「樹海には行かないからね(笑)」
「マキさんの葬式に出るまでは俺は生きるからね(笑)」
「来週のグランドチャンピオン大会、楽しみだね」などの僅かなメール文にすがる思いで今朝を迎えた。
そうしたら今朝になって元気そうなメールが届いたので、一安心した所だ。

修は、かなりの寂しがり屋だし、注射一本すら怖がるほどの臆病ものだから、自分から死んだり出来ないとたかはくくっているのだが、それだって真の部分ではだれにも解らないことだし、もう「残された命を大切に生きろ」などと言う無責任な言葉も使いきれない自分も居る。

そんな立場にいる友人と、今後どうやって寄り添って行けばいいのだろうか・・・・・・。
普通に今まで通り楽しくしててあげることが、きっと一番なのだろうなぁ……。
いくら頑張っても人の運命や定めのようなものを変える事は出来ないのだし、アタシは先ずアタシの生を無駄なく生きなければならないのだから……。

日記がしばらく書けなかった理由はそんな事も含まれていたのだが、今朝の修の「来週は大応援団を引き連れて応援に行くからね」と言う、すがすがしいメールに慰められ、「アンタの事を日記に書いても良い?」と入れたら、本人に「オレの事は何を書いてくれてもかまわないからね。その代わり面白おかしく書いてよね」と言われたので「面白おかしくなんて書けるか!!アホ!!」とメールを入れておいた。

それでやっと今日から日記を書く気持になれたのだ。
修自身もアタシの日記は毎日楽しみにしてくれているみたいだしね……。

来週のカラオケ大会のグラチャン大会は、何としてでも優勝して、修の冥土の土産にしてあげないといけないなぁ……。
それで喜んで癌が治ってしまうかもしれないし……。
元はと言えば、カラオケ大会にイヤイヤ出場したのも、修が「カラオケ大会に優勝したら健康ランドのホテルの無料宿泊券がもらえるよ」という言葉にまんまと騙されたからなのだから……。

しかし、アタシは何で「別離」などと言う曲を選んでしまったのだろうか・・・・・・。
その部分をとても後悔している……。
来週アタシはこの歌を泣かずに歌えるのだろうか・・・・・・。



2011年12月12日(月)

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