2004年03月21日(日) :
読んでしまったよ……
読み終わってしまったよ、『アヌビスの門』。 ……正直、期待していた歯車エンジンと蒸気機関の世界がそこになかったのは、残念でしたが。 そんなこと気に掛からなくなるぐらい面白かった!! ディック賞受賞、のフレコミは伊達じゃないッスよ、ホントに! 何でこんなに面白いものを品切れにしていた、ハヤカワ!! 思わず、一気に読んでしまった……。
いやあ、何が凄いって、これって、一種のタイムトラベルものなんですが、もう至る所に伏線が仕込まれてて、綺麗に全部解決されちゃうんですよね。 タイム・パラドックスも生じないで完璧に。いや、もう脱帽。 勿論、読んでいくうちに、主人公の英文学者ブレンダン・ドイルが研究していた謎の詩人、ウィリアム・アッシュブレスの「正体」は明かされる前に分かるんですけど。 それにしても、あのプロローグが、あんな形で本編に絡んでくるとはなあ。 そんで、「うひー」と思ったのが、1983年に生きていたドイルが、コールリッジの講演を聴きに行った19世紀、1810年のロンドンで、独り取り残されるくだり――。何ていうか、「もう勘弁しちくり」と読んでる方が思ってしまうんですよ。だって、考えてもみたら、知人がいるわけでもなし、その時代の通貨を持っているわけでもなし、住んでる家があるわけでもなし――なーんもないんですよ。元の時代に戻れる保証もなし、の正にないないづくし! この後も、ドイルには災難が付きまとうわけですが。 基本的に、スチームパンクてのは、勧善懲悪が「お約束」だそうで。じゃなかったら、もうあんまりにも、ドイルが哀れっつーか……。読んでる方がいたたまれない気分になってきます。いや、ほら、私ヘタレだから。
「歴史と魔術に彩られた奇想天外な伝奇物語」帯に書かれたコピーですが、SFでありファンタジーであり、の物語でした。 繰り返しますが、ホントに面白かった。タイトルのアヌビスが示すとおり、エジプト神話が物語に深く関わってくるんですが、百聞は一見にしかずですよ、興味を持った方は、是非一読をお薦めしてしまいます。 ハヤカワ文庫FT、作者はティム・パワーズ、訳者は大伴墨人です。読者アンコールフェアによる復刊です。
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