あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2002年07月08日(月) 墓堀人夫



もう 飽きてきて
なんとなくもういいやと思ったので
神様は最後に
墓堀人夫を創って
別の世界を
創りに行きました

そうして
ばたばたと死に絶えるヒトを
掘った墓穴に放り込んで
放り込んで
墓堀人夫は
草原を行き 海を渡り ツンドラの果てまで
錆びないように作られた身体は
ずっと
死骸だけを探し求めて

振り向くたびに
埋葬の終わらない死骸と
口を開けて並んだ墓穴の数が
同じにならず
なんだかもう泣きたくなって
墓堀人夫は
それでも穴を掘りました
海辺に掘った穴は
すぐに波につぶされて
骨と皮だけの死者がむきだしになって
崖の上に掘った穴は
やがて雨に流され
死者は幸せそうに土砂の上に顔を出して
とにかく
隠せ と
穴を掘りました

弔う 者も いないのに

それでも
ひとつ ひとつの遺体を
欠け落ちてわからなくなった骨を選り分け
せめて頭蓋骨だけは別に
穴に入れて
土をかけ
手を固く握り合う骨たちも
引き剥がして

地を掘り返せば
湿った骨が
虚ろに墓堀人夫を見上げたので
歩き巡るのに疲れて
木を切り倒し
池を埋めて
腐った骨を 髪を
入れました

手に取れば
くだけるような
骨ばかりに
なってしまって
もう
土も砂も骨も
見分けられなくなって


すこしずつ
大地は
かわいて
錆びない骨で 作られた 墓堀人夫を
砂で
ゆっくりと埋めました

腐らない
身体は
かわくことも
ねむることも知らずに
ただ
自ら掘った穴に 倒れて
その明るさに
茫然と
しているだけ






↑そうなのかな。
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周防 真 [MAIL] [HOMEPAGE]

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