あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2004年02月11日(水) 恋ワスラヒ


 
雨が降りそうにゆがんでくる空を見ながら、
朝はもう遠い、とわかった。
ひきつったように雲は降りてきて、
あなたが好き、と言った指先がゆっくりと意味を無くして溶けていくのが見えた。

さようなら、
電車に揺られて窓に叩きつけられる雨粒を数えている。
真っ青な空がちらり、と雲間にのぞいて隠れた。
あのひとの髪に這わせた指を、
チョコレートで黒く汚しながら口元に運んで噛みしめる。
舌の上でなめらかに流れるのは凛々とした声とカカオの苦味。

歯列をなぞって舌が言葉を探す。
縛られているのは恋だろうか、
それとも
冷ややかに去っていく夕立とあれが濡らすあのひとだろうか。

ホームに降り立つと雨が濃く香った。
降りそこねた恋が濡れたレールに滑っていく。
頬に名残りの雨が弾けて、
さみしい、と言ったあのひとの目の色に空が濁っていく。





↑気付かないでも。

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周防 真 [MAIL] [HOMEPAGE]

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