怒られるのはキライだ。 怒るのも好きじゃないけど。 怒られるのは泣きそうになる。 僕が悪いんじゃない、と思ってる場合だと余計に。 かつかつと歩くそばからゆっくりと視界が歪んでいく。
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先輩がハリポタを貸してくれると言う。 わぁい。 本は何でも好き。 活字なら何でも。 恋人がくれるメールの文字を何度もなぞる。 やわらかく溶け崩れていきそうな甘い文字。 僕がもっと強い人間だったらよかった。 そうすればあのひとはもっと幸せだったんじゃないか、とか考える。 強くてやさしいライオンになりたかった。
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帰り道、桂の駅前でパトカーのくるくる回る赤いランプを見る。 タクシーの運ちゃんは殺人事件があったのよ、と教えてくれる。 男のヒトが刺されたって。 黄色いテープとたくさんの野次馬。 殺人は隣の町の出来事じゃなくてすぐ此処で起きる。
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