その階段は雨の日も湿ることなくじっと佇んでいました、
窓を、押し開けて屋上へ。 どんなに僕が狡猾でも、それが許されるためでないことだけはわかっていた。 わかっていてほしいと思った。
孤独は心臓の内側にある。 どくどくと流れ出て身体を支配しては、またゆっくりとしぼんでいく。 鼓動は孤独の鳴き声で、僕はそれを愛していた。 いつの日も。
雨の日には、傘を差さずに歩く。 きっと風邪なんかひいてしまうけど。 それで身体の中にある熱が少しでも出て行ってくれるなら安いもんだ。 前髪をつたう雨粒を吸う。 きっともうすぐあのひとが来てくれる。 傘を差しかけて、泣きそうに怒る。
ほのかに、裏切りの匂い。 嗅ぎ付けるのは本能で、論理思考はそれを否定し得ない。 ただ宥めるように手のひらで包み込む。 僕らは明日が遠いのを知っていて、それを待ち焦がれたりはしないことにしている。 ただやるせない夜を言葉で埋めて、窓を開けて外へ歩き出す。 言葉は歩くたびにほろほろと服の裾からこぼれて、夜道に静かに光る。
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