よる。
風があり寒い。 家に帰ってスープを少しだけ食べる。 冬は好きなんだ。 昼が短すぎて、明るい外を歩くのはとても尊いものになってしまうけど。 手袋も好き。 明日は薄い、黒い皮の手袋をしていこう。 それで頬を包み込むと、自分ではない誰かの手に思える。
よる。
Q、電話をありがとう。 うまく外に吐き出せない人間でゴメン。 それ以前に不精な人間でゴメン。 あなたがいてくれてよかったと思ったよ。 天の邪鬼なのは昔からだけど、外界に向ける意識が極端に少ないのが僕の欠点だ。 そして笑い飛ばすあなたの強さに憧れる。
よる。
内側を空っぽにする。 新しい香水のかおりを吸い込む。 目覚めるように、祈りを少しずつ削いでいく。 少しばかり自分を捨ててみよう。 唇を、 こじあけて。 誰もの視線を背に受けるように、僕はいちばん先へ立とう。
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左腕がイカレている。 不用意に伸ばせなくて困る。
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