あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2004年11月01日(月) 夜の話




よる。

あめは小雨。

おれんじ色の灯りがぽつ ぽつと点いている中を歩いて
蛍光灯のしらじらとした営業所へ行った。

僕のあとから自転車に乗った白髪の男がふらふらとついてきた。

営業所には男がふたり 電話番のようにそこにいて

 忘れ物をしたのだが

と言う僕に

 どうぞ掛けてください

と 椅子を勧めた。

黒手袋は片方
少し汚れて戻ってくる。

 なにかありましたらまたごれんらくください

というこえにおくられて営業所を出ると
自転車の男はたばこをすいながらまだそこにぼんやりとまたがっていて
僕にうわのそらで会釈をし ケムリを吐きながらあめに濡れている。

おれんじの灯りは
廃墟の群れのような無人のバスをてらしながら
あめは小雨 わずかな風に
ふうわりと僕も濡れる。







↑グレーテルが近付いていく。

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其人曰く、西方に浄土有り
彼地に在りては者皆飢えること無し
樹木は実り 地には乳蜜の流るると

師問いて曰く、此方は飢えぬことすなわち浄土なるかと
其人応えて曰く、否

師重ねて問う、何の故を以って西方を浄土とするやと
其人応えて曰く、人の和を以ってなりと

師曰く、なべて人獣を問わず万物の内に争い有り
羊狗の前にて安らがず 人虎の前にて安らがぬが如しなり
故に西方を人の和を以って浄土とするは誤りなりと


曰く西方浄土なるは時の経たず命の衰えぬを以ってなり
斯くなればこそ 彼地を浄土と言うなり





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周防 真 [MAIL] [HOMEPAGE]

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