どうしようもなくさみしくなって
深く酔って帰る深夜、なんてものに慣れたくはなかった、と 思いながら なんてワガママなんだろう、と 僕の中の貴女が言う
僕が選ぶものはいつもどこか不安定なのだ。 そして僕はきっとその不安定さを愛している。
ぐらぐら。 深い黒のカウンタに座って隣に座るヒトを観察、する。 最近飲みだした水割りは冷ややかに舌を焼いていく。 あなたにも過去が色々あったんだろうね、なんて言うニンゲンを僕は一生信頼しないだろうと思う。 けれど僕もきっと言う。 くちびるに、浮かぶ笑みはきっと見た目ほろ苦いのだろうと思う。 タバコを少し強引に勧められて、 挨拶のようにぷかりと 強めの白を吐き出して見せる。 くらりと する。
アルコホルは血管を収縮させるので体温を下げる働きがある と 思いながら9℃の外気に震えている。 指先がひやりと冷たいので てのひらを誰が穢してもかまわないと思える。 投げやりに、もう帰ろう、と言う舌が動かないように感じる。
あぁきっと明日も、
明日も、 あさっても、
きっと、
ただ僕にできるのはあのヒトを癒してあげたい、と思うことくらいで
それもまたある意味では不遜に過ぎることで
たぶん僕にできるのは僕がせめて死なないでいることくらいで
自分の死の日のことを語らないことくらいで
でも泣かないでね、 泣かないでね、 あなたはどうでも優しすぎる。
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