あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2005年03月05日(土) 友達は読まないでください (あるいは、 僕の原材料 に ついて )




手短に。



熱い風呂をいれて、浅く浸かりながら昔握りしめた手のことを考えている。



光あふれる場所からほんの少しだけ離れた暗い客席で握りしめた手。
冷たく強張るこの左手に、その右手はやわらかく汗ばんで熱かった。

何度も閉じたいと思った目を赤くしながら熱気に満ちた講堂を抜けた。
足早に、外へ出て緑の明るさに目もくれず、また別の暗い部屋へ下りていく。
息と脈が速いのがわかった。
地下の暗さから明るい美術室へ入って、そこにいた他人の声でようやく、ずっと握りしめていた手を離した。



ヒトを捕まえた、と思ったのはその時が初めてだった。
手を捕らえて、何かが壊れたのを感じた。
それは最後の境界だったかもしれない。
愛でもなく友情でもなく、すべての意識的な朝を灰色に変えるようなもの。
悔やんだことはなくても、無意味だったかもしれないとは思う。
ただ無駄ではなかったと、せめて僕は言おう。







↑おいし い 

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