ことば、が
君の手で壊されたのを見て僕はようやく救われたように微笑む
あのひとが、 僕の捧げた言葉をすべて捨てたと聞いて 僕は黙りこくり しばらくしてうなずいた 「そう」
怒りは ひとのことばをすべて聞き終えるまで ほころばず 僕は僕の言葉を喪に付した ひとつのこらず 昨日が今日に そして明日が消えるまで
狂暴なのは心で それは狭い籠の中で泣き叫んで暴れた 手に入れるのはひどく簡単なのに 変容した朝はもう 二度と 清らかにはならない の を 憶えられずにいる
なみだが
なみだが ながれでようとするその 一瞬前に あっけなく瞼に溶けてゆくのを 僕はもう あきらめていて
名を 呼んではいけないことくらい たとえばもう あのひとのいなくなったことをしらせるでんわをとったよるのしずかさくらいには わかっていたり するのです
あなたを僕に、 あるいは僕をあなたに。
|