京都に帰り着くと夏の夜が香った。 地下からゆっくりと、エスカレータを上がると、満天の星を見上げるように幾何学模様のアーケードがきらきらしていた。 異国に、帰ってきたようだ、なんて考えながら草臥れた体を在来線の各駅停車に乗せた。 やわらかく夜の空気は弾力に満ちていて、僕を抱きしめるように包む。
たくさんの思い出を塗りつぶす。上から重ねて汚してゆく。 それで救われるって思える自分がまだ青くさいと思う。
知ってる。 消せない思い出は結局、自分がどうしようもなく消したくないだけで。 上書きなんか一度だってできないようないちばんまっさらな場所があって、目を閉じるその一瞬さえも必要なく、その場所は僕を抱きしめてしまう。 そこでは僕は息もできない。
あぁ、 こいしい、
I'll never be able to
5月も終わり、もうすぐあのひとが、
死んでしまった日だ。
ただ、何度も、何度でも僕は嘆く
夢なんか一度も見ない。
それなのに何故、 あなたは行ってしまうんだろう
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