バスを降りると、風の中に雨の気配。冬だというのにどこか緩んだ空気の中、明るく光る店へ入る。店の中は年末の気忙しさで浮かれたように暖かく、鼻白む思いで僕は早々に店を出る。外へ出ると頬に霧雨。僕の怖いもの、苦手なものの筆頭。振り払うように、痛む喉から声を歌にする。寒さと震えで音程なんかあったものじゃなくて、なんだかとても、ひどく眠くなってしまって困る。どこへでも、行けると僕は、思ってました。