居待月
夕暮れ
建物に切り取られた冬の梢を見上げてひとを待つ
もうすぐここにいとしいものがやってくる
風はきらきらと冷たく 深い藍に沈んでゆく空
南へゆく鳥の声が聞こえる
待ちわびる耳にはかすかな落ち葉の音もひとのあかし
たとえばそこに 愛はなくとも
ここへ運ぶ足音だけにも心があるならそれで
世界は
切り取られた空へとだけゆるく開かれて
いまここに仄かにあかるい
そこへ堕ちてくるように
あなたが堕ちてくるように
言の葉が あなたを縛り
あなたを閉じ込めてしまえるように
闇よ 来るな まだ
あなたが遠い
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