癒える恋なら恋ではないと思っている。 言い得る恋なら恋ではないと思っている。 得うる恋なら恋ではないと思っている。 知り得る恋なら恋ではないと思っている。
僕の世界は二つだけだ。 あのひとのいる世界と、 あのひとのいない世界。
そういう愚かで哀しい理屈を、僕はまだまじめな顔でこねてみたりする。
そうして必死に、僕のいる世界はあのひとのいない世界だと信じようとしている。 あのひとがいないと思えば世界は闇だ。 ただしあのひとがいると思えば世界は灼熱の地獄だ。ここにいたくないと想う自分を抑えられない。 あのひとは太陽で、僕をあまねく照らし出す。 あのひとは太陽で、どこにいても僕にその存在を見せつける。 僕は翅を無くし身を焼かれるのをわかっていながらも、あのひとを目掛けて飛ばなくてはならない。
僕は正しく樹になりたい。 大地に縫い止められながらもただ太陽を乞う樹になりたい。
これがただの願望だったらいい、 そしてそれが絶対に叶わないのだったらいい。
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