両手の指を、組み合わせて、 いのる、 それだけの穏やかなはずの空白の時間を 僕は何度でもあのひとのために費やした。 気も狂いそうになりながら、あるいは不思議に澄んだ気持ちで。 もう十分だと思う。 あのひとがいなければこの日々は、ただの平凡な「少し不幸せ」でくくられるものになるのに。
そんな重く凝ったものをこのところずっと、無意識のどこかに抱えている。 安らかに、とだけ思って目を閉じる夜の眠りと覚醒の狭間にするりと、その影が潜んでいる。 わかっている。 忘れたいのなら忘れればいい、 嫌いたいのなら嫌えばいい、 世の中の有り様を考えて組み立てるのは自分であるからして、それらを受け容れるのなら悪あがきせず簡単に受け容れればいい。 受け容れないのは僕で、それはただの我侭だ。
そうしてあのひとにはコトダマがなく、 僕の言葉に僕だけが縛られる
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