ひのひかり。 この時期になると必ずと言っていいほど体調を崩す。 陽射しがまっすぐに胸に落ちるようになって、見上げれば目にまぶしく痛い。
桜の白さ。 爛漫の春を思い通りにしなければ気が済まないみたいに、枝もたわわに満ち満ちる花びら。 その下に怠惰に寝そべって、花はみんな下を向いて咲くのだと言ったひとを僕は生涯忘れられないと思う。 桜ばかりが花ではないとは思っても、春を描けば桜が映るのだから仕方がない。
ただ花は花でも、浮かぶのはもう遠い、薄暗い中庭に落ちた八重桜の花枝の白さ。
ひのひかり。 夜明けが少しずつ白くなる。 体は正直に温められて和やかになり、意識も伸びやかな日々に向く。 そうしてその度に少しずつ心の座標軸が狂う。 春は切々と刻々と鮮やかになるので、その変化についていくのに混乱する。 本当にわずかに微量になら、ついていけないこともないのに、と悔しい。 ひのひかり。 燦々と僕を照らし胸の奥底まで暴くひかり。
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