| 2003年05月25日(日) |
加納朋子『ささら さや』★★★☆☆ |
 『ささらさや』 加納 朋子 幻冬舎 (2004/04)
夫を突然の交通事故(不注意で赤信号で突っ込んできた車にはねられた)で亡くし、首も座らない赤ん坊と二人きり残されたサヤ。 気が弱く、お人好し。 ただひとりの孫を養子に、と圧力をかけてくる夫の親族。 逃げるように、不思議な町「佐々良」へ移住する。 にぎやかで面倒見がよく、けれど実はとても寂しがりや、恐れを知っているおばあちゃんたち、強くて豪快なエリカ、ダイヤ親子といったともだちも出来た。 サヤの周囲で起こる不思議な出来事。 一番不思議でサヤの生きていく支えになっているのは、夫の魂がいつもそばにいてくれて、ここぞという時に誰かの体を借りて助けにきてくれること。 でも、それもいつまでも続くわけじゃない…。
小さな子どもを持った母のひとりとして、読み進むのを躊躇した。 どうころんでもつらい結末しかなさそうで、それを直視したくなくて。 でも、ハッピーエンドでした。
ひとは誰でも、ほんとうに、誰でも、死ぬのだということ。 遅い方がいいけれど、いつかは必ず別れるということ。
それを痛感した。 そしてできる時にできること、したいことをしなくちゃなあって。
優しすぎ、弱すぎ、泣き虫のサヤ。 読んでいてイライラするほど。でも、彼女も気づく。 もちろんそれは彼女の長所でもあり、そこを夫も「馬鹿ッサヤ」と愛情こめて呼ぶのだけど、それではだめなのだ。
『自分は嫌になるくらい、世間知らずで甘ったれで弱虫だ。サヤにもその自覚はあった。だが、弱いということ、それ自体はなんら罪ではないと思っていた---今までは。 だが、より小さくか弱い存在を庇護する立場にある者にとっては、弱さは単なる能なしの代名詞でしかない。それがよくわかった。 もし必要なら、敵を引き裂く爪を持て。そののど笛に食らいつく、牙を持て。』(P308)
ここまで読んだ人には最後の一行にサヤの成長と、母の強さ、強くあらねばならない必要性を驚きとともに感じることでしょう。
なんだか透明感のある、不思議なおはなしでした。 息子ユウスケは、きっと佐々良のまちで、スクスクと育っていることでしょう。私もいつか行ってみたいなあ。
『ささらさや』
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