母のタイムスリップ日記
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2002年07月12日(金) |
暑いけど、外は面白い。 |
昼下がりホームに、FさんとHさん姉妹の声が響いてた。 「財布がないんだよ。」「銀行にはお金あるの?」「あるよ」 どうやら、帰りたいのだけれど、財布がないと困って居る様子。 「Fさん今日は」と声を掛けるとにこっと微笑が返ってきた。 職員の人は、なにか、話し合い中で、看護婦のNさんが、ドアをあけて 「すみません」と声を掛けてきた。
母は、居室トイレに居た。表情は、明るく調子が良いとわかった。 それにしても、この暑い日に、半袖のTシャツの上に、7分のTシャツ。 その上に、透かし編みのカーデガンを着ていた。下は、7分パンツを2枚 重ねて、スラックスだった。 また、着替え。ランニングシャツ、半袖Tシャツ、7分パンツ、 スラックス。薄手の綿長袖ブラウスを持ち、帽子をかぶり外出。 皆に「行ってきます」と挨拶をした母。
外に出ると、「暑いなア」の連発。「出かけないほうが良いかな?」と 尋ねると「いや、暑くとも外の方がいろいろあって面白いから。」と言う。 今日は、近くの温泉に行く事にする。 バスで、20分ぐらいの所だ。バスに乗ると、母は、珍しそうに車外の景色 をきょときょと眺めていた。楽しそうな顔をしている。 温泉についても、何をする所かわからない様子だった。 脱衣室に入っても、そうだった。「お ふ ろ 服脱ごう」と声を掛けると、 順番に脱ぎだした。 洗髪し、体を洗い、浴槽へ。「おおきな、広いおふろだね」とまた、 きょときょと。実に楽しそうだ。 折角来たのだから、ゆっくりと入りたい所だが、母に合わせなくては ならず、早々にあがった。 上がってからも、「実に、気持ちよかった」と上機嫌だった。 近くで、お茶とケーキを食べて、帰りのバスに乗る。
今日も、帰路に「何処に行って来たかな?」と問う。 やはり、「忘れちゃった。」「そうか。」と笑い返した。
そうそう、出かける前に、母は ベランダに出て何か叫んでいた。 「なに?」とと問うと、「ほら、あそこ行くのよっちゃん」と指差した。 日傘を差した人が歩いていた。「よっちゃーん」 私は知らないが、母の話では、祖母の兄弟らしいのだ。時々登場する。
施設に戻ると、夕食の時間なのにその気配もなかった。 夏時間かなと思った。入所者はテーブルを囲んでいたが、キッチンは灯火してなかった。 男の子の職員が、事務室で1人タバコをぷかぷか。出てこなかった。 ホールでは、また、F,H姉妹が帰ろうと騒いでいた。 思わず、「今日は外暑いから、帰るのは明日にしない?」と声を掛けた。 その声に吊られて、タバコを手に職員が出てきた。 私が施設ですごす時間なんて、数時間の事だけど、人によって対応が違う と思う。いろいろ、解らなくとも、入所者の顔の見える所に居る人が、1番 安心できる。
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