母のタイムスリップ日記
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「お母さん、昨夜はピクリともせずに眠ってました。」と夜勤明けの人が 教えてくれた。 と言う事は、その前は、不穏だったかな?と思った。 これは、猜疑心でなく、母のパターンだから・・・。 職員は、ケース会議とかで全員別のフロアへ移動した。 と言う事は、このフロアには、入所者だけか・・・。 「私が残ろうかな?」と思ったが、母のための時間を選んでしまった。 公園でスケッチしている人がいた。 じっと、こちらを見ているので、傍に行くと数日前会った人だった。 母と「面白い木だねえ」と見ていたら、一緒に覗き込んだ人だった。 故郷を離れて、息子さんと住みだした事。デイ利用を始めたこと。等を 教えてくれたのだった。痴呆も無いように見える方だ。 雨が降り出し、話もそこそこに お別れしたのだった。 この人は、きっと 「会えるだろう」と待っていらしたなと感じた。 「こんにちわ」と声を掛けた。その人も、にこにこと笑顔を返してくれた。 少し、お話して別れた。 名前も住まいも お互いに知らない。でも、「存在」だけは、知っている そんな関係かな・・・。
更に歩くと、母と私で、どんぐりを拾う場所に差し掛かった。 立ち止まり、また木を見上げていると、そこの家の人が声を掛けてきた。 また少し話し込む。母は、傍らでにこにこ話を聞いていた。 以前の母なら、「全く いつまで話しているの・・・。」と不機嫌に なったものだが、この所 そう言う事が無くなった。 その家の人が、「柿 持って行きなさいよ」と言った。 「すっかり、甘いから」とも言った。 「お言葉に甘えて・・・。」と言い、直ぐ傍のグループホームに住んでいて フロアに7人いるので、7人分戴いても良いですかと尋ねた。 「あーあそこね。どうぞどうぞ。」と枝ごと折ってくれた。 お礼を言って、ホームに向かった。 母は、嬉しそうに「親切な人だね」と言った。でも、ちょっと歩いたら、 「買ったんだっけ?盗んだりしてないよね・・。」と言い出した。 「ほら 親切・・」と言いかけたら、「そうだったね。」と思い出した。
柿を持って、施設に戻ると、仲間は、「あーーっ」と柿に注目した。 テーブルに置くと、皆、触った。 「柿に白く粉が付いたようになると、おいしいんだよ。」この言葉は、 全員がそれぞれ口にした言葉だった。それには 驚いた。 実は、故郷の柿は殆ど渋柿なので、そういう知識はなかった。 母が折り紙をしようと、絵を描こうと、殆ど関心を示さないのに柿には みんな、興味を示して、それぞれの思い出に浸っている風だった。 いい風景だったので、途中、胡桃を買ったのを思い出しそれも出してみた。 みんな、手に取り とても 懐かしそうだった。 フロアは秋色となった。
皆に食べてもらったのは、職員に了解を得てから。 でも、歯の無い人は、刻んでも かなり固かった様子だった。 故郷の渋抜きした柿なら食べられるなと思った。
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