母のタイムスリップ日記
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ペンと紙を渡したら、車椅子のO氏は「帰りたい」と書いた。 胸がキュンとした。 その数分前まで皆で家族の話をしていた。 そして、O氏が七人兄弟の2番目で、お子様もいらっしゃると言っていた。 「帰りたいのはお子さの所?故郷?」と聞いてみたら「故郷」と口パクした。 O氏の心の中は見えない。 でも、「帰りたい」と言う思いはビンビンと伝わってきた。
「何をしているの?」と責任者の人が来た。 「帰りたいんだって」と伝えると。 「つくしの出た頃にね」と言い、続けて「こういう事って大切なのよね」と言った。思わず「むっ」とした。 何も本人を前にして後の言葉は 言わなくともいいのにと思ったのだ。
私も余計な事をしていたかもしれない。 いたずらに心を揺さぶってしまったかもしれない。 でも、時に溢れる思いをゆっくり聞いてあげてもいいじゃないか? 面会者の訪問が殆どない泣き虫のO氏なのだから、思いを馳せている時位 黙って受け止めてもいいじゃないか?
責任者が離れた後も故郷の話を続けた。 私も知っている場所なので話しかける事はできた。
その後の流れでフロアに住む人皆で紙風船をした。 一人輪の中に居乍らウトウトしていたI氏も騒ぐ声につられて仲間に入った。 少し汗ばむほどの時間だった。
それぞれが、いろいろの事情で施設入所しているのだろう。 でも、面会って大事だ。 そっと心に寄り添って上げられる人が時折傍にいて欲しい。 私は、職員でないけれど。いや、職員じゃないからこそそう言いたい。
ここに書けない思いを心の奥底に深く閉じ込めながら、そう言いたい。
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