短いのはお好き?
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「あ。あの……それじゃあ、私の告白をはじめさせていただきます。……あの、えと」
すかさず花梨(かりん)が叫ぶ。 「チビデブ! 先ず自己紹介しろ! 誰なんだよ、てめえはよ」 「あ、ごめんなさい。あたし少しあがってまーす」 ポンさんの額から玉の汗が流れ落ちて行く。 「んなこと聞いてねえんだよ。名前だ、名前!」 「はい。えと、あたしメグっていいます。はじめまして」 一斉にステージ前の客席から、笑いが起こった。 「ガハハハハ。メグってツラか、おまえんちにゃ鏡ってもんがねえのかよ。このハゲダコ!」
これも、花梨が言ったのであるが、ハゲダコとは言い得て妙である。ポンさんのツンツルリンのハゲ頭は、興奮のためか、恥ずかしさのためか、それとも先刻まで呑んでいたポン酒のためか定かではなかったが、確かに朱に染まっていたからである。 「おらおら、それからどうした!」 と、少し控え目の声でなつめが言う。 「あ、はい……ごめんなさい。えと、とにかくあたしメグっていうんですけど、気にいらなかったらごめんなさい。あの、メグは……あの……源さんが好きです。ハート」 「えー!!」と、皆が口々に叫びながら、カウンターに引き取ってカクテルを作っていた源さんを見た。源さんは苦笑いしている。
「おいおい、ハゲメグ。それほんとかよ、初耳だな。それで、どうしたやったのか? 正直に言えよ、嘘ついたら承知しねえぞ」と、麗子。 「え、いやん。そんなみんなの前で、そんなこと……」 「ばかかおまえは。何ぶりっ子してんだよ。なにがいやんだ、50ヅラ下げてよ」 「え! ひっどーい。メグはまだ17だもん♪」 「ギャハハハハハ! 17だってよ、どこにそんな赤黒い顔した、しなびたタコみたいな17がいるんだよ」 と言って、南がポンさんめがけて缶ビールの空き缶を投げつけたが、それはツルっパゲの後頭部に当たるや否や、見事にツルっと滑って床に落ちた。
「ハハハハ! すべった、すべった。ツルってすべった」 南は、指差したまま笑いころげている。 とうとう、ポンさんは泣き出した。 「みんなひどい。あんまりだわ。よってたかってメグのことバカにして……」 「アホかおまえ、まじに泣いてどうすんだよ。さっきのつづきはどうしたんだ、やったのか、やらねえのか」 「あ、え、それは……」とポンさんは、指のささくれをいじり出した。 「はっきりしろよ、ナマハゲ!」 「メグ、頑張ってぇ!」との声援は、サナエちゃん(45)である。 「うっ、うれしい。こんなメグをかばってくれるなんて」 ポンさん、今度は嬉し泣きに泣いている。
と、そこへ新入りのあゆみが、遅れてやって来た。
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