短いのはお好き?
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2002年07月07日(日) |
空模様の加減が悪くなるまえに |
渋谷のタワーレコードでひと暴れしたぼくらは、次いでNHKにいくことにした。むろんファイヤー通りを闊歩してゆくのだけれど電力館が視界に入ったのだろうか、スズキくんが急に入ろうよとダダをこね出した。
「ね、クイズに答えて景品もらお。おれもう何十回って入ってるから全部答え知ってんだよ」
ぼくはなんとかスズキくんを宥めすかし、電力館を諦めさせた。というのも急がないとNHKで渡辺香津美のライヴが始まってしまうからだ。すでに一回目は終わっている筈で二回目に間に合うようにとタワーを後にしたのだった。 スズキくんが言う。 「そのさ、香津美っていう人そんなに上手いわけ?」
スズキくんは、ノイズとプログレという相容れないジャンルには詳しいのだけれどジャズには疎く、ヒノテルって誰? っていう具合なのだった。 渡辺香津美のライヴ告知をタワーで見たのだったが、ぼくは即座にある計画を思いついてしまい、CDを叩き割るどころじゃなくなったのだった。 計画遂行にはギターが不可欠なのだけれど、あいにく持ってきてないので、どこか楽器屋で調達しなければならない。しかし、ギタリストの端くれとしてギターならば何でもいいというわけにはいかないのだ。きょうは何にしようかと暫し悩んだすえ、チャーでゆくことにした。どうでもいいけど、彼のFirstは、最高だ! 背景に霊峰富士山のアルバム・ジャケもgood! というわけで? つまりムスタングってなわけでして。 要はですね、楽器屋に殴りこみをかけ、店員があっと言う間に疾風のごとくムスタングをかっさらって脱兎のごとく逃げまくりで、そのままNHKホールに乱入し、香津美と壮絶なギター・バトルを繰り広げるという崇高遠大な計画なのでありんす。 ぼくらは、モスにはいってオレンジ・ジュースを飲みつつ、ナンタコスを食べた。ひとつ隣のテーブルにはコスプレのお姉さまたち。
「乱入は諦めてコスプレのちゃんねーでも口説くってーのはどうよ?」 「うっさいな。少し黙れってーの。いま香津美と演る曲なんにするか考えてんだからさ」 「ピンク・フロイドの『原子心母』か、イエスの『危機』できまりっしょ」 「きみは世の中のために早くいなくなったほうがいい」
2時間後。ぼくらはいまだにモスに居座りつづけてる。こんなことってあってもいいんだろうか? だって、コスプレのネーちゃんたちが席を立ったあと、そのテーブルにモノホンのヨッスィーが来たのだった。ジャーマネらしき人物とふたりで、ジャーマネは入ってきたときからずっとケータイでしゃべりまくってる。たぶんさ、渋スタで収録があるんだよ、と知ったふうな口をきくスズキくん。 もうスズキくんの喜びようったらなかった。酸欠のカバのように大きく眼を見開き、ただひたすら口を開閉するばかり。ぼくは、なんか尿意を覚えトイレに立った。 戻ってきてびつくーり! ヨッスィーたちも、スズキくんも影も形もない! ぼくはあせりまくったけど、よく考えてみたらケータイですぐスズキくんはつかまるんだと思って、なんかほっとした。
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