短いのはお好き?
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自宅の二軒先に美容院があった。 早朝に美容院の前を通るときなど、ぱんぱんに膨らんだ麻袋が店先に出ているのを見掛けることが何度かあった。 むろんそれが髪の毛であることはすぐにわかった。いったいあの大量の髪の毛はどこに消えてしまうのだろう。ずっとずっとそのことが気になっていた。
というのも、単に焼却処理されるだけではないような気がしたからだ。一説によると○o○○ー○の製造に使われているということを聞いたことがあるけれど、そのことは絶対口外してはならないという暗黙の了解が存在するらしい。 むろんそれは、○o○の売上げが激減するだろうからだが、ちょっとこの話題は危なすぎるのでこのぐらいにして、
とにかく、その日のボクは寝不足も手伝ってやたらめったらハイになっていた……ということにしておいてほしいのだけれども……ついつい出来心ってやつで、草木も眠る丑三つ時? いそいそとベッドから起き出すと美容院に向かった。
美容院のちょっと広めのエントランスの目立たないところに、お目当ての麻袋はひっそりと息衝いていた。周りを窺いつつ、そろそろとしかし、すうっと近づいていってやおら麻袋の口の紐を解くと頭から中にもぐり込んだ。
すぐにもシャンプーの臭いや埃っぽさで一気にむせかえったけれども、存外中は温かく(ま、純毛にはちがいないが)すぐに眠り込んでしまったのだった。
夢の中でぼくは、ついに髪の毛の行方をこの目で確かめることが出来、思わず右手の拳を突き上げると快哉を叫んでいた。
白々と夜が明ける。
美容院のエントランスに、男がひからびた河童のように大の字になってのびていた。
遠くでパトカーのサイレンが鳴っている。
仰向けにのびている素っ裸の男の股間を隠すようにして、そこにA4くらいの紙切れが張り付いている。
そこにはこんな文字が躍っていた。
この者は、Webのさまざまな掲示板にある事ない事ならべたて、当業界全体に甚大な被害をもたらしたため、ここに公開処刑を敢行し反省を促す次第である。
○○だからといって甘く見るなよ!
全国○○連合協議会
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