短いのはお好き?
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そういえばきのう、ぼくは彼女と連れ立ってというか半ば彼女に引きずられるようして面接場所に指定された街外れのとあるビルへと歩いていきました。 道すがらぼくはまったく緊張していなかったといえば嘘になるかもしれませんが、面接にこれから向かおうとする人物とはとても思えないほど不謹慎な妄想に囚われていて、バイト先のえっちゃんの乳揉みてぇとか、いずみちゃんいいケツしてるなぁとか…。まあ、それは置いといてぼくらは最寄の私鉄の駅で降りたまではよかったのですけれど、歩いても歩いてもなかなか目的のビルへと辿り着かないのでした。これはもうまったくのlabyrinthに迷い込んでしまったようで、背が低くてヘナで金髪に染めててデートのときは必ず朝シャンするから遅刻して演劇やってて御多分に洩れず寺山かぶれで歌舞伎町でやっちゃんと喧嘩して前歯を1本折られたかわりに相手のを3本へし折り、晴海埠頭から観る花火がいっとう好きで都庁の食堂が案外おいしいって知ってて、おっちょこちょいだからチャリによく轢かれてカウアイ島生れでアストロに乗っててお父さんが官能小説家で自由が丘での待ち合わせが苦手でプライドがほどほど高くって壊れた日立のペルソナをいつまでも大切そうに持ってて桜吹雪のtattooを一緒に入れようというのが口癖で初対面の女の子にもブーツ穿いてるから足が臭いって平気で叱れて、石鹸のいいにおいがして腰のキレがよくってマジにシャイで大食漢でラブホのボイラー室で働いてたことがあって政治は好きだけど政治家が嫌いでネイル・アーティストの話を聞かせてくれとよくせがんで、不器用に深紅のアルマーニ特注ブリーフ穿いてて二人っきりになると暴れん坊将軍で鳶職だから高いところもぜんぜんへっちゃらでゴロ巻くときは流暢なnative americanが出る人っぽい男に道を訊ねてやっとビルを探し当てた頃にはすでに冬の日がよわよわしく西の山山の向こうへと消え入ろうとしていました。 そんなこんなでぼくらは、もう疲れちゃったし面接どころじゃないほど腹がすいたので急遽、月島に100円もんじゃを食べに3億円した自家用ジェットで向かいましたが、機内でヘッドフォンから聴こえてきたプロコル・ハルムの『青い影』に涙がとまりませんでした。
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