短いのはお好き? 
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2003年07月06日(日)  ぼくのイヴ。

 

ぼくがPCの電源を落としていつものようにベッドルームに入ってゆくと、綾はまだ起きていてケータイの画面を見つめながら、なにやら深刻な内容の文面でも打っているのか表情ははっきりと見て取れないけれど、その真摯な様子は伝わってきて、こっちまで眠ってはいけないような雰囲気になってしまいおやすみの声すら掛けられないのだった。
 

 とはいっても、ぼくは眠りにきたわけでもないし、ぼくの言う「おやすみ」はまた別な意味のおやすみなのだけれど。


 今夜の綾はぽっちゃり系で髪はワンレンのようだ。昨夜はベリーショートの髪にやたらスレンダーな綾だった。(ちなみにぼくはぽっちゃり系の方が好き)


 声を上げさせないためにもバタフライナイフを先ずちらつかせるのだけれど、今夜の綾はなぜ怖がらないのだろう。見ず知らずの男が独り暮らの女性の部屋に侵入しているのに、である。


 だが、近づいてゆくと綾の歯がカチカチと鳴り出した。どうやら恐怖に声すら上げられないらしい。すぐ楽にしてあげるからね、そうぼくは心のなかで嘯く。


 更に近づいて少しばかり驚いた。今夜の綾は上玉だ。すこぶる付きの美形なターゲットにぼくは気後れすら覚えた。


 隣の部屋から物色してきたタオルで綾を後ろ手に縛る。いつも傷つけないように細心の注意を払ってタオルで両手を縛り上げてゆく。


 その手首から二の腕にかけて、ザラついた感触に驚いて手を止めた。見るまでもなかった。間違いなくリスカだ。生半可ではない夥しい数の傷跡。この子はいったいどれほどの苦しみをくぐり抜けてきたのだろう。この傷のひとつひとつが彼女の苦悩の表出であり、また唯一の逃げ場なのだ。


 そう思ったら涙がこみあげてきた。こんな人形みたいな整った顔の女の子なのに、いったい何を悩んでいるのだろうと、醜いぼくは思った。まるで美女と野獣だ。


 そして、そう思った刹那、ぼくは心に決めていた。


 でも、そう決めてしまったら尚更、彼女が可哀想でならなかった。愛する男の手にかかるならまだしも、こんな見ず知らずの醜い男の手にかかって死ぬなんて彼女が憐れで仕方ならなかった。


 ぼくもじき逝くから。
 ひとりじゃ寂しいだろ。


 そういってぼくは彼女のか細い首に手をかけた。







 


 


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