短いのはお好き? 
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2003年10月04日(土) okan





自由が丘で東横を降りて、緑ヶ丘図書館に行こうと思っていたのに…気付いたら、もう田園調布に着いていた。


仕方なく、もう一度本に視線を落としたのだけれど、字面を追うばかりでいっこうに頭に入らない。
ていうか、書名はなんだったのか。いったい何を読んでたんだっけか?


うとうとまたしていたら、前髪がごっそり抜け落ちる映像が繰り返し見えてゾッとする。




禿げだけはいやだよぉ。




不意に車窓から金木犀の清清しい甘い香りがして…。





もう秋なんだなぁ、と思ってる自分がいて。





ふと小林さんはきょうこそは動画を見れただろうかと思った。きのうHな動画をあげたのだけれども、喜び勇んで、さぁー見るぞ! とアパートのドアを開けたら母親がいたという。



「横浜でね、友達と会うからカズチャン今夜泊めてちょーだい」





シェークスピアも真っ青。笑えない悲劇だ。いや、悲劇はもとより笑えないものなのだけれども。







ま、なんだかんだいっても今がいちばんいい季節だよな。なんて思ってるうちにご帰還アソバサレマシタわたくしめ。



鍵穴にKeyを差し込む。


んんんんんんん!!!!!!!!!!




開いてる?????????????






「あら、おかえんなさい。早かったのね」


狭いキッチンでエプロンをしたおばはんがこちらを振り返って笑みをこぼす。





はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁぁぁぁぁ???????




完全に部屋を、階数をまちがえたと思った。2Fじゃなくって、3Fだったのか。







「すいません、まちがえました!」そういって取って返す、その背中に


「なにいってんの。さ、もうできたから食べましょ」






いったんドアを開けて表札を確かめる。まちがいはない。しかし、表札など作ろうとすればいくらでもつくれるのだ。騙されないぞと思ったりする。


この世の中じたいすべて嘘っぱちなのだからして、いったいなにを信じていいのかもわからないのだ。





だって、この俺様からがしていったい誰やねん? 


自分は自分なのだろうけれども、この肉体は実際に自分の肉体なのか。たんにこの肉体という檻に幽閉されているに過ぎないのかもしれないのだし、またその檻には自分だけでなく、いくつもの人格が入っているかもしれないのだ。






「ところでアンタ誰? ここでなにしてんの」



「あらあら。実の母親の顔も忘れたってわけ?」




ざけんじゃねー。





「もうとっくに死別してんだけど…」




「あははははは。アンタは相変わらずやね。ま、いいさ。ビールでも飲も」





「あはははは。そやね、昔のことはもう忘れて、今夜は飲み明かそうや」






部屋に入って、PCを起ちあげる。いったいどうなってんだ。怪奇現象に巻き込まれた少年A、鼻毛を三本抜かれて重態! という三面記事の見出しが見えた気がした。






「さ、用意できたわよ。はじめようよ」


どう対処していいのかわからない、凄すぎて。




「じゃ、とにかくカンパ〜イ!」





小さなガラスの丸テーブルは、食べきれないほどの料理で溢れかえっていた。



キンキンに冷えたビールを口に含みながら、いったい俺はなにをしているのかと暫し自問自答。







「ほら、アッちゃんの好きな筑前煮だよ、たんさん召し上がれ」




ははは。力なく笑う。筑前煮なんて知らないし、そもそも俺はアッちゃんなどではない。
完全にイカれてるのか、このばばぁ。




それとも…。







「で、親父と俺を捨てて、今までどこにいってたんだよ?」




「いきなりかい。ま、それはおいおい話してくからさ…」







会話が弾むはずもなく、もうどうにでもなれと、ただ黙々と浴びるほど飲んだ。











やがて、気付くとおばはんは消えていた。



俺が…バスルームからシャワーを浴びて出てくるまでは。





出てくると、おばはんはベッドに横たわっていて、裸のままの俺を手招きするのだった。




定番のスケスケのピンクのネグリジェを着てるおばはん。


ネグリジェの下にはなにもつけていないおばはん。



ネグリジェから下半身の黒い翳りが透けて見えているのを知っているおばはん。










俺は、まさに蛇に見込まれた蛙のごとく吸いこまれるようにして、一歩一歩ベッドに近づいてゆく自分を、どうすることもできなかった。












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