2003年06月16日(月)

■ 気が弱くって、口下手で。

歯医者に予約を入れようと電話した。
したらば、「どうされました?」と訊かれ、
ぼくは戸惑ってしまうのだった。

同様の質問なら、動物病院で何度も受けた。
そのたびぼくは、吐いてばかりで元気がなくてとか、
喧嘩して深い引っ掻き傷ができちゃってとか、
ワクチンの接種をお願いしますとか、
まぁ、そんなことを猫に代わって答えてきた。

でも、今回は歯医者だで?
どうしたもなにも、歯医者だで?
腰が痛いだのお腹を壊しただのといった答えは、
向こうも期待していないだろう。

だからといって「歯が痛い」という当たり前すぎる返答も、
先方を困らせてしまうのではなかろうか。
実際、ぼくは痛みがあるわけではなかったが、
痛いなら痛いで、どこがどういうふうに、
できることならなにゆえ痛いのかまで説明すべきではなかろうか。

しかし、尋ねているのは、おそらくはなんの資格もなく、
たぶんたいした知識もない、ただの受付の女性なのだ。
わかるのか? 詳しい状況をあんたに言ってわかるのか?

そして、それはそのまま医師に伝わるのか?
診察時にそっくり同じことをまた言わねばならないとしたら、
ここであんたに説明することの意味はなんだ?

などといったことをめまぐるしく考えてしまったぼくは、
「どうされました?」に返すことばをしばしなくした。
すると相手は言い募る。「どうされました?」。

沈黙の理由を知りたいわけではあるまい、
それなら「どうかされました?」のはずだなどと思いながらも、
ぼくの口をついて出たことばはこうだった。
「あばば。あうあう」。

悪かったね。気が弱くて口下手で。


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