小説の構想やら更新予告やら短い話やら。
誤字脱字やら単語が中途半端に途中だとか色々あるけど気にしない。

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君が好きでした。
2002年09月12日(木)

君にたったひとつだけ嘘をつきました。
大丈夫だなんて嘘でした。

 本当は、君がいなくても世界は楽しい事にあふれているから大丈夫だなんて事はない。君がいなければ世界はこんなにも味気ない。その事に気づいたのは、君がいなくなってから一ヶ月と三日の事でした。


「…今日も空が青いねぇ…」
「何言ってんだ、そんな事より掃除しろ、掃除!」
ペシ、と軽い音をたてて南が俺の頭を叩いた。
螺旋階段を降りてすぐの踊り場。一階から最上階まで吹き抜けになっていて、天井に貼られた透明な窓ガラス越しに空を見るのが好きだった。(そういえばこれは亜久津の癖でもあったのだが、その時はすっかり忘れていた。)
空は同じようにみえて全部違う。それがまた面白くてつい見入ってしまうのだ。
ましてやもう部活動も引退してしまい、かといってエスカレーター式の学校なので受験勉強とも無縁の自分にとっては、ちょうどいい暇つぶしになっていた。
「いったぁ〜…何さ南、別にやってないわけじゃないでしょー?」
「お前のは掃除になってない!真面目にやれよ」
「はいはいはいはい、わーったよぅ」
部長気質、というか何と言うか。南はこういう時にリーダーシップをとるのが似合うなぁ、とつくづく思う。気配りもしっかりしているし、怠けすぎるときちんと注意する。成績も良い。きっと彼は教師から見れば理想の生徒だろう。まぁ、それは事実ではあるが。
兎に角、南をからかいながらの掃除の時間は、唯一学校の中で楽しいと思える時間だった。
全てが味気なく、面白味に欠けるように見える。
そんないつもどおりの掃除時間中だった。
「あ、千石先輩、南先輩!」
少し高めの声に2人して振り向くと、階段上に太一が居た。あいかわらず背が低いなぁ、と思いながら笑顔を浮かべて手を振った。彼はこちらに少し急ぎ足で降りてきた。南は不思議そうに太一を見た。
「何だ、どうしたんだよ太一?」
「あのっ!さっき伴田先生に聞いたんですけどっ!あのっ、亜久津先輩、あっちで何か事件に巻き込まれたらしくってっ!それでっえっと…!」
太一は言葉に詰まり、あたふたし始める。
一方俺は予想外の言葉に表情が凍り付いた気がした。
「………え、ちょっと、まって、…え?」
どうしてだか、うまく言葉が出ない。頭の中では、オーバーヒートしそうなぐらい様々な亜久津との記憶が止めどなく恐ろしい程のスピードで溢れだしていく。
それは、俺の、この世界で一番好きだった、人。
もう忘れたつもりだったし、忘れるつもりだった。
でも本当は忘れる事なんか無かったし、できやしなかった。本当は寂しさで死んでしまいそうだったから、極力考えないようにしていただけだった。
自分にまで嘘をついて、忘れるふりをしてまで、その事実を否定しなくてはやっていけないぐらい、自分は彼に依存していた。
ただひたすら彼が好きだった。
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極悪本…こんな感じ…?
うー…太一が出る予定はないんだけど。




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