Sports Enthusiast_1

2007年06月24日(日) J1は折り返し地点に

●折り返し点の順位

サッカーJリーグ1部は、折り返し地点に達した。中間地点の順位(暫定)は以下のとおり。( )内は昨年の順位。

1位:ガンバ大阪(3)、2位:浦和レッズ(1)、3位:鹿島アントラーズ(6)、4位:アルビレックス新潟 (14)、5位:ジュビロ磐田(5)、6位:柏レイソル(J2)、7位:川崎フロンターレ(2)、8位:清水エスパルス (4)、9位:横浜Fマリノス(9)、10位:ヴィッセル神戸(J2)、11位:名古屋グランパスエイト (7)、12位:サンフレッチェ広島(10)、13位:FC東京(13)、14位:ヴァンフォーレ甲府 (15)、15位:大宮アルディージャ(12)、16位:ジェフユナイテッド千葉(11)、17位:大分トリニータ(8)、18位:横浜FC(J2)

こうしてみると、ここまでのところ、新潟、柏、神戸の善戦・奮闘が目立つ。とくに、昇格して6位をキープした柏、10位にしがみついた神戸の頑張りを評価したい。

意外なのは、大分、千葉の凋落ぶり。どちらも、このままで終わるとは思えないけれど、クラブ経営基盤の脆弱性が順位に反映しているような気がする。とりわけ千葉については、当コラムで詳しく書いた。オシム父(現日本代表監督)の遺産を食い潰している点が気になる。

●筆者の予想

さて、開始前、筆者が掲げた順位予想は、以下のとおり。
�。蚤膾紂↓�磐田、�1栽臓↓だ邵蝓↓ゼ�島、��清水、�Ю虱奸↓┨�島、��東京、��横浜FM、��名古屋、��大分、��大宮、��甲府、��横浜FC、�或軍磧↓映陝↓何生�

筆者がワースト3位に挙げたのが新潟、柏、神戸なので、実際の順位から外れたが、上位は概ね、外れてはいない。そういう意味で、今年のJリーグは混戦とは言えない。

後半戦でこの順位が変動するのか、それとも、微動で終わるのか――筆者の予想では、上位については、あまり変動がないような気がする。G大阪と浦和の2強の競り合いがシーズン終盤まで続くものの、結局はG大阪が浦和を制して優勝と。もちろん、もう一波乱、二波乱を期待しているので、2強の競り合いは筆者の期待するところではない。



2007年06月22日(金) 代表の席は・・・

代表の扉は、中田英のみならず、カズにもゴンにも開かれている。極論すれば、この「私」にも。

オシム代表監督の「中田英待望論」は、スポーツ新聞の捏造記事に近い。スポーツ界に話題の乏しい雨の金曜日、スポーツマスコミの大げさな報道に、驚いた人も多かったのではないか。中田英が代表に復帰する?

オシム代表監督は、中田英に敬意を表した。このことは、外国人であるオシム氏が、日本人全体に敬意を表したものと考えられる。オシム氏が日本を代表するサッカー選手の一人・中田英を貶める発言をして得るものはなにもない。多くの日本人は、中田英を世界の一流選手の一人だと信じている。中田英は日本人の誇りなのだ。

シニカルに言えば、中田英は、「日本の」ペレ、マラドーナであるが、ペレ、マラドーナと同じ力があるわけではない。オシム氏が外国人記者クラブで語ったと報じられた「中田待望論」を、まさか、本気で信じた人いないとは思うけれど、念のため、説明をしておいた。

さて、中田英を媒介として、現在の日本代表をどう考えたらいいのか――オシム代表監督は、次のような問題点を示唆したものと貧者は考えている。いまの日本サッカー界には、�|翕脹僂里茲Δ法�欧州の強国のリーグで活躍できる実力者はいない、��中田英のように、経験豊富な選手がいない、�C翕脹僂里茲Δ法▲蝓璽澄璽轡奪廚鬚發辰秦�手はいない、�っ翕脹僂里茲Δ法⊂,舛砲海世錣訌�手はいない、�ッ翕脹僂里茲Δ�・・・

オシム氏が代表監督の肩書きで、こんなことを口にすることはできない。代表監督は、与えられた戦力で戦わなければならない。日本には、ロナウジーニョもクリスチャンロナウドもカカもいない。中田英は引退してしまった。

中田英引退後の日本代表の置かれた状況とは、ペレやマラドーナが引退した後のブラジル代表やアルゼンチン代表に似ているかもしれない。ただ、レベルは全然違うけどね――オシム代表監督は、そう言いたかったのかもしれない。さらに、中村俊輔を持ち上げる日本のスポーツマスコミに対し、中村は中田英の代役ができないことを暗示したかったのかもしれない。

さて、そんな状況で日本代表監督を引き受けたオシム氏は、日本代表の目指す方向を定めた。それは、豊富な運動量(走力)、タッチ数の少ない早いパス回し、前線からの守備(プレス)等々であろう。このことは何度も、このコラムで書いてきたので繰り返さない。

サッカーはスポーツ。当たり前だけれど、人間がやる団体スポーツ。チームの中心となれる選手とそうでない選手がいるということだ。



2007年06月21日(木) 食いつぶされたオシムの遺産(千葉)

降格圏内まで順位を下げたJ1の千葉が2連勝。とりあえず、圏外からの脱出に成功した。と言っても、前々節の甲府戦、前節の大分戦ともに辛勝であり、このまま上昇気流にのれるとは思えない。この先については、予断を許さない

しかも、連敗中、監督批判をしたストヤノフ(ブルガリア代表)が、無期限自宅謹慎に処せられる「おまけ」までついた。アマル・オシム監督は、ストヤノフの処置について父親(イビチャ・オシム日本代表監督)に相談していると考えられるから、“ストヤノフ切り”は、親子の固い意思の表れだろう。オシム父は、スタープレイヤーの存在を認めない。どんなに力のある選手であっても、規律に従わない選手を切ってきた。

オシムが千葉の監督だったとき、ベテランの日本代表のN、韓国代表のCがオシム父に切られたことが最近出版された新書に紹介されている。Nの場合は、オシムに別メニューの練習を申し出たところ許可され、同時にサテライトに落とされたという。Cの場合は、FWとして前にはるだけで、守備をしない・走らないため、戦力外とみなされ、磐田に放出されたという。

このたびの“ストヤノフ切り”は、表面的には、N、Cと同じケースだと見られるが、果たしてそうだろうか。報道によると、ストヤノフのアマル監督批判は、サッカーの考え方の違いだとされている。思えば、ストヤノフはオシム父のサッカーに忠実な選手だった。ストヤノフの攻撃参加は、「計算されたリスク」の実行だし、彼の奔放な守備位置の取り方は、「状況に応じた選手個人の創造的判断」によるもので、どちらも、オシム父が常々選手・マスコミに力説するところだった。つまり、ストヤノフに関する限り、規律違反は監督批判というプレー以外の事項であって、サッカーの取り組み方やプレーに係るものではない。

監督批判はもちろん規律違反だから、ストヤノフを処分する――この措置は結果的には,当然のように見える。だが、選手が報道陣に対して監督批判をするというのは、これまた固い決意の下での行動である。チームがノーマルな環境ならば、監督が選手の声を聞かないことはあり得ない。おそらく、アマル体制の千葉では監督と選手のコミュニケーションが平常ではなかったはずだ。選手は選手同士で勝手にサッカーをやり、監督は監督で勝手に自分のサッカーをやろうと思っていたに違いない。両者の間には深い溝があり、そのような異常なチーム状況において、ストヤノフは大きな賭けに出たのだと思う。

筆者はストヤノフに同情する。ストヤノフとアマル監督との間の事情を知らない上で、勝手にストヤノフの肩をもつ。もちろん、筆者の判断が正しいと言うつもりはないし、推測、推察、憶測の域を出ない限りでの断言にすぎないのだが。

千葉(クラブ経営陣)は、オマルを守りストヤノフを切るつもりだろうが、その決断は恐らく正しくない。千葉の不調の主因は、アマルの指導力の欠如ばかりでなく、補強の失敗が挙げられる。もちろん、それはクラブ側の責任だ。今シーズン、千葉が降格もしくは降格ぎりぎりの順位だとしたら、クラブ経営者は責任をとって辞めるべきだ。

このたびのストヤノフの一件は、千葉のチーム状況を象徴している。選手と監督の間には、コミュニケーション・ギャップが存在する。選手と監督は、同質のサッカーを共有していない。ギャップを埋めるコーチやベテラン選手もいない。オシム父が築いた「千葉」は、今シーズン、その遺産を食いつぶしつつ、間近に崩壊が見えている。筆者の想像では、監督批判をしたストヤノフを放出しても、チームが上昇気流に乗ることはない。クラブが“ポスト・オシム”を描かない限り、千葉に明日はないのである。



2007年06月14日(木) 千葉が危ない

今年のJ1はつまらない。日本人スタープレイヤー不在、日本人ストライカー不在、大物外国人選手不在が重なり、スケールの小さい試合が続いている。リーグのレベルダウンの影響で、代表のパワー不足が補えない。Jリーグから選考された代表選手が安定的な力を発揮するまでに至っていない。代表ではFW・高原、DF・中澤の2人のW杯ドイツ大会代表選手が加わってリーダー格となり安定した。換言すれば、新しいタレントが育っていないということだ。

中田英引退後、欧州に渡った小笠原、大黒がセリエAでは通用せず、ゲームというよりも、ベンチにすら入れない。2人とも、Jリーグではトップクラスであったにもかかわらず。ドイツの高原、フランスの松井を除けば、日本人選手が試合に出られるリーグは、スコットランド、トルコ、スイスといったところ。俊輔、稲本、中田浩がレギュラーだといってもサッカー一流国でないところがさみしい。イタリア・セリエA、英国・プレミア、スペイン1部の欧州最強3カ国において、試合出場の可能性がある日本人選手といえば、元ヴェルディの森本ただ一人だが、その森本もケガで長期離脱といった状況だ。

さて、Jリーグの“異変”と言えるのが千葉だ。日本代表監督のオシムの息子・アマルが采配を振るうも、レギュラーのケガと選手層の薄さに阻まれて、第14節時点で降格圏内まで順位を下げた。

当コラムの順位予想では、阿部、坂本の抜けた穴は埋まらないと書いたが、ここまで順位を下げるとは予想外だった。外国人3枠のうち守備の要・ストヤノフ(元ブルガリア代表)、新外国人ジョルジョビッチがケガ、ハースの抜けた外国籍枠は空席のままの状態だ。しかも、代表FWの巻がコンディションを崩し、昨年の輝きを失っており、得点の気配が感じられない。

千葉の特徴は、選手の運動量にあった。オシム時代、猛練習で培った運動量と献身的守備により、Jリーグでトップクラスの地位を築いたけれど、他チームが同じようなトレーニングを行いだしてからは、むしろ、走り負ける試合も見受けられるようになった。もともと、決定力不足、パワー不足のチームなだけに、相手が千葉をスタミナで上回っていれば,勝てない。その典型的な試合が、第13節の対G大阪戦だろう。前半は豊富な運動量と攻撃性で千葉が1点をリードしたものの、後半運動量が落ち、動きが鈍くなって追いつかれ(相手のボランチ・明神にボックス内でボールを奪われ同点ゴールを決められた)、さらに、終了間際、ボックス付近でファウルを犯し、遠藤のFKで負けてしまった。

サッカーは90分間の勝負。千葉の負けパターンとしては、�〜鞍召箸个靴得萓�点を入れたものの、後半、スタミナ切れで、相手に逆転されるケース、�∩鞍勝∪虱佞謀世�入らないまま、相手が点を入れて負けるケース、�A鞍勝⊆虍�が整わないところで、大量失点して大負けするケース――が固定化してしまった。とりわけ�,離院璽垢論貿圓噺討个譟�敗戦のショックが尾を引く。選手の精神面への影響が大きい。

選手層の薄さも気になる。移籍した阿部の穴を埋めるはずの上村(前C大阪)、同じく坂本の穴を埋めなければいけない山岸が調子を落としている。ストヤノフの欠場を中島が埋められないし、ハースの穴を黒部、新居が埋められない。調子の上がらないレギュラー陣を追い抜く若手や控がいない。選手層の薄さとは、控とレギュラーの力の差が大きいことも意味する。

千葉を建て直すにはどういたらいいか。当座の策としては、アマル監督の解任が一番だと思う。アマル監督は、父親のイビチャ・オシムを真似ているが、生来のシニカルさが監督業に合っていない。監督解任のショック療法で、選手の精神面に活を入れることしかない。

長期的施策としては選手層の薄さの克服となるのだけれど、これはクラブ経営、とりわけ、資力の問題だから、いますぐには、どうにもならない。この期に及んでは、J1、J2の各クラブでレギュラークラスが補強できるはずもなく、外国人1名の補強くらいにとどまる。

千葉の今後としては、アマル解任のショック療法で、巻、羽生、山岸、水野の代表組が気分を一新し、佐藤、ストヤノフ、ジョルジェビッチが復帰し、獲得した新外国人が活躍して、順位を5つ程度上げ、降格圏内から脱することができれば、御の字だろう。



2007年06月05日(火) 代表選出基準

キリン杯最終戦、日本代表はコロンビア(世界26位)と戦った。この試合の前半、海外組の中村(俊)、稲本、中田、高原が先発したが、高原以外は貢献しなかった。前半押されっぱなしだった日本を救ったのは、後半、開始とともに投入された羽生だった。相手選手にかけるプレッシャー、前への飛び出し、スペースを探して動き回る動きが、日本に活気を与えた。

“名より実”とはまさにこのことだ。名前では、海外組の稲本、中田浩だが、チームが勝つためには羽生のような豊富な運動量が必要だ。全員が「羽生」というわけにはいかないけれど、羽生のように、与えられた役割を全うすること、運動量で相手を上回ること――ができる選手がオシムジャパンの基盤となることが、コロンビア戦でわかりやすく立証された。羽生は、ジーコジャパンでは、絶対に代表に選出されることのない選手の一人だろう。

日本代表に相応しいのはだれか――良識的かつ常識的意見として、Jリーグで成績のいいクラブから選手を選ぶという考え方がある。が、しかし、Jリーグの順位は優秀な外国人の有無に規定される。以前書いたとおり、現在1位のG大阪の攻撃力は、ブラジル代表経験をもつFWマグノアウベスの存在を無視できない。浦和の2位も、ブラジル代表経験のあるFWワシントンに負っている。3位の川崎は、欧州クラブから声がかかるジュニ−ニョが、昇格して4位を維持する好調の柏もフランサが引っ張っている。5位清水は韓国代表のチョ・ジェジン、フェルナンジ−ニョが、6位の名古屋にはワントップで頑張るヨンセン(元ノルウェー代表)がいるし、7位広島にはJの得点王ウエズレーがいる。

その一方、力がありながら低迷しているクラブの代表が、現在9位の鹿島だ。昨年まで確実に得点を上げてきたFWアレックスミネイロが退団し、清水から移籍してきたFWマルキーニョスが本調子ではない。中盤では、クラブ世界一に輝いたサンパウロのレギュラーMFのダニーロがJリーグに馴染めず、先シーズン限りで退団したフェルナンドの穴を埋めていない。そのため、才能のある若手をチームとしてまとめられず、柳沢の故障も相まって、勝てなくなってしまった。

9位以下となると、最下位横浜FCにはこれといった外国籍の有力選手はいないし、大宮も新しく獲得した外国人がことごとく戦力になっていない。16位と、降格圏内まで落下した千葉は、キリン杯で日本代表を5人送り出しているにもかかわらず、退団したFWハ−スの抜けた穴が空いたままだし、リベロのストヤノフがケガ、さらに、新戦力のジョルシェビッチがケガで出場できない。14位の甲府はバレーがG大阪に移籍して得点力不足に泣いているし、13位のFC東京は、鳴り物入りで獲得したW杯出場の実績を持つワンチョベのコンディションが上がらず下位に沈み、12位の横浜Mもケガで外国人3人が揃わない。

Jリーグの順位を眺めてみると、Jリーグで順位を上げる方法は難しくないように見える。Jで勝つには、有力な助っ人を揃えることだが、しかし、これはリーグの世界的傾向なのであって、欧州CLを制したミランやプレミアのマンチェスター、リバプール、チェルシー、スペインのバルサ、マドリードしかりであり、Jに限ったことではない。

Jリーグの上位から代表を選ぶという考え方は、良識的かつ常識的だけれど、危険である。代表選手の選出条件がJリーグで活躍すること、すなわち、チームの勝利に貢献し、チームの順位を上げることであることはまちがいのないところなのだが、サッカーが団体競技であるため、クラブの順位と選手の実力が相関しないことがある。

代表の最大の課題の1つが、得点力不足であり、FWの人選が極めて難しい。先述のとおり、Jリーグでは、G大阪、浦和をはじめ上位リームのFWは外国人が占めているから、代表FW選出に当たっては、Jリーグの上位チームから選ぶという基準を満たすことができない。Jリーグでここ数年安定した力を発揮しているFWの選手で、代表チームのコンセプトに合致する者が代表になるのは必然である。その結果、下位の千葉から巻が選ばれることになる。

06〜07年シーズン、スコットランドリーグで大活躍した中村(俊)は、代表で機能したのだろうか。コロンビア戦に限れば、十分、力を発揮したとはいえないし、チームに貢献したともいえない。W杯南アフリカ大会出場に向けた日本代表が、彼のチームであるはずもない。中村(俊)は、数あるMFの代表候補の一人に過ぎないのである。海外組を崇拝するマスコミ、一部代表サポーターはコロンビア戦で少しは目を覚ましただろうか。



2007年06月03日(日) 谷という天才

谷は、今シーズン、オリックスから読売に移籍した。それまで、谷といえば、やわらちゃんの夫君ということしか知らなかったのだが、読売移籍後、テレビ中継でそのバッティングを見る機会が増えた。

ご存知のように、今年の読売は大幅なチーム改造を行った。谷、そして、日ハムから小笠原を獲得、昨年ロッテから移籍した李を含めた中軸3人をパリーグの中心打者で固めた。生え抜きの高橋、ニ岡、阿部がそれぞれ1番、5番、6番に下がり、1〜3、4〜6のダブルクリーンアップを敷いた。史上最強の読売打線が今シーズン確立したことになる。打撃の中心選手が6人そろえば、いかなる試合でも6人のうちのだれかが仕事をするに決まっている。だから、読売は強い。

さて、本題の谷だが、彼のバッティングにはまったく特徴というものがないように見える。素人の筆者から見ると、自然に打席に入り、投げられたボールに自然に反応する。バットに当たったボールは、相手の内野と内野の間、外野と内野の間、外野と外野の間、そして、外野の頭の上・・・を越える。谷はそんな打撃で先制打、逆転打を放って読売に勝利をもたらせる。

好打者は“山を張る”といわれる。彼は“山を張って”いるのだろうか。筆者にはそのように見えない。たとえそうであっても、そう見えないところが彼のすごさだ。一般的に、好打者の条件として“ポイント”の多さという表現がある。投手のボールをヒットゾーンに打ち返す点が多ければ、ヒットが増えるというわけだが、そういう意味で谷のポイントは多い。もう1つは、ヒットゾーンが広いという表現もある。右打者が左(引っ張り)・右(流し)を自由に行えれば、ヒットは増える。

谷はいずれの条件をも満たしている。ひょうひょうと打席に入り、来たボールに自然にバットを出し、ヒットゾーン(ときにオーバーフェンス)に打ち返す。谷は恐るべき天才打者だ。

スポーツジャーナリズムは、谷のバッティングの不思議さに注目すべきではないか。筆者は谷のような打者を知らない。スポーツジャーナリズムには、ぜひ、谷の打撃の秘密について、特集をくんでもらいたい。



2007年06月02日(土) 不適切な金銭供与

先月、プロ野球西武の調査委員会は、高校・大学・社会人の監督ら延べ170人や契約前の5選手に不適切な金銭供与があったと公表した。高校野球が純粋な「アマ」でないことを筆者は何度も書いてきたのだが、このたびの裏金問題は、不適切な金銭供与があった者の名簿を開示することが、問題解決を大きく前進させる。すべての報道機関は、このたびの裏金問題の根源的解決方法の1つとして、プロ側から金銭等を受け取った者の名簿を開示するよう、西武側に求めるべきだ。

それに反すかのように、最近、A新聞が高校野球を巡る「悪の」キャンペーンを開始した。記事の内容というか傾向は、純粋な野球高校生の周囲に蠢く悪い大人たち――という構図で貫かれている。しかし、野球高校生で最も金儲けしている張本人がA新聞なのであって、スカウトやウ裏口入学斡旋業者等はA新聞の派生物にすぎない。

さて、一般論では、贈賄・収賄はセットになっている。ある目的のために賄賂を贈る者がいて、(それが賄賂だと知りながら)受け取る者がいる。贈る者は悪いが、相手がそれを受け取らなければ成立しない。賄賂を贈ろうとしたことを告発すれば、贈ろうとした者には制裁が下る。

贈られた賄賂を黙ってポケットに入れれば、そこで収賄が成立する。このたびのプロからアマに向けた金品の贈与に対して、それを受け取った側の顔が報道から見えてこない。受け取った者の数が多すぎて報道しきれないのか、報道するとその影響が大きすぎるから報道しないのかのどちらかしかないのであって、筆者は後者だと確信する。「アマ」の指導者として社会的地位が高い者が実は、プロから金品を受け取っていたのではないか。おそらく、野球好きの人なら、あれ〜あの人が・・・というくらいの人物ではないか。

西武球団を叩くのは簡単だ。西武側は金品の贈与を認めているからだ。西武の謝罪が足りないとか、調査が不十分だとか新聞に書く記者がいるようだが、そんな駄文を書く前に、西武等のプロ球団から金品を受け取った「アマ」の指導者を実名報道したらいい。金品を受け取った理由、それについてどう考えているのか、金品授受が発生する構造は何か・・・野球好き、野球嫌いを問わず、だれもが、このたびの問題の本質を知りたいはずだ。新聞記者ならば、その核心を取材して報道してほしい。

これまで、筆者は推測を書いてきた。その一端を繰り返せば、裏金の発生の原点は、「アマ」の指導者が果たしている役割に比して、彼らの収入が低いことだ。指導してきた「球児」たちは、卒業してドラフトに係りプロ球団と契約すれば、一般高校生が就職して得る年収の10倍以上が契約金として入手できる。ところが、指導者の年収はせいぜい、学校の職員もしくは教員よりもましくらいなものだろう。もしも、指導者が学校職員等に比して以上に高い収入を得ていれば、指導者は「アマ」でなくなる。そもそも、「アマ」の建前では、高校野球は高校生の部活(サークル活動)のはずだから、特別な(プロフェッショナルな)指導者が存在すること自体が不正に当たる。

普通の高校における部活指導は、名目的な顧問の教師が一人いて、先輩がその任に当たる。筆者が高校時代(公立高校の場合)に属していた格闘技系の部活の場合、現役及び卒業した先輩が指導者であった。対外試合の場合であっても、顧問教師が引率することはない。公式の大会予選等の場合だけ、顧問教師が引率した記憶がある。もちろん、顧問教師に特別な手当てがあった話は聞いたことがないし、先輩が高校から手当てを受け取ったこともない。指導料、交通費・用具用品等々に係る経費はすべて自己負担だ。とにかく、こうした環境からは、プロですぐ活躍できるようなスポーツ高校生は育たない。

普通の高校生の関心事としては、受験勉強、恋愛、読書、音楽、ボランティア活動・・・そして、スポーツとしての「野球部」がある。もちろん、高校生活を「野球」に絞り込む高校生活もある。そのうえで、スポーツの天才の存在も否定できない。高校生として必要な学力を身につけ、そのうえで、部活としての野球をやり、卒業後、プロ球団と契約できるようなスーパー高校生もいないとはいえない。いないとはいえないが、いまの「甲子園球児」がそうでないことは明白だ。「甲子園球児」というのは、レベルの高い野球中学生を野球専門高がスカウトし、彼らに専門の指導者をつけて集中して練習をさせ、対外試合・練習試合等の過程でレギュラーと補欠を選別し、選ばれた精鋭が予選大会に送り込まれ、そこで勝ち抜き甲子園大会出場を決めた者なのであって、特別の才能、特別な環境、特別な指導・・・の下に野球をする高校生たちなのだ。

特別な指導と書いたところで、このたびの裏金問題に戻る。裏金問題の片側の主役・収賄側の指導者たちは、特別な役割を果たしながら、自分達が育てた「球児」が多額の契約金でプロ球団に入り込む様子を片目で見ながら、心の中では自らの報酬の低さに愕然としているのではないか。報われない清廉なる「アマ」精神を馬鹿馬鹿しく感じたのではないか。もしそうならば、その胸中を取材者に語り、収賄の構造を明らかにしてほしい。その瞬間、大新聞のアマ野球担当者の偽善報道が無に帰すはずだ。

日本の「アマ」ほど、いびつな世界はない。本音と建前の際立った乖離のなかで、限られた者が富を独占する。その一方、「アマ」に押し込められた当事者は、その建前の中で喘いでいる。

冒頭に記したとおり、西武球団は裏金を渡したことを認めているが、裏金がだれに渡したかを明らかにしていない。西武は、裏金を受け取った側が自ら名乗り出ることに期待をしているのだろうか。A新聞がやるべき仕事は、まず、西武球団がもっているリスト(金品を受け取った者)を公表することだ。そして、加熱する甲子園報道を中止すること――高校野球を普通の高校生のクラブ活動に戻すことだ。そうすれば、甲子園野球界に蠢くという裏口入学斡旋業者等は自然に一掃される。


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