恋文
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すずめが けんかをしている
ちいさな すずめは 組み敷かれて しきりに つつかれている
ひとが 近寄って ぱっ と離れてしまった
ちいさな すずめは 軒のはしっこに とまって すこし みづくろいをすると
まわりを 見渡して とんでいった
わたしの かたちに なる
あぁ なんて むずかしい わたしの かたちに なるなんて
わずかな わたしの かたちを かんじると
ただ うれしい
いろんな わたし ひとつに なれない わたし
ただ ひとりの わたし なのに
カラスが 見ている どんな 風景
線路のあいだの みどりの 草地を
こちらを 向いてから はねていった
綿毛は とばなかった
たんぽぽは 刈り取られて
短い みどりが 濡れている
だれも いない 鳥も どこに いったのだろう
雨音を 聞いている
ライラックの かげから 飛び出してきた 鳥は なにかを くわえている
雨音は 音がしない
だれかと すれ違う そのときですら もう 世界に 音はしないみたいに
わたしを 透かして わたしの 向こう
知っているのに 知らないふりをして
黙って なにを見ていよう
庭には 鳥がきて なにか 啄ばんでいる
狂ってしまった わたしの 生き物の時間
ゆき過ぎたり あと戻ったり
鳥たちも 花たちも もう 春を告げているのに
菜の花を 思い浮かべる
晴れた空の下の いちめんの 菜の花
きょう 雨のしずくに 濡れている
うしろの森が けむったように 沈んでいる
こんなに 軽いなら どこにいても いないみたい
ただよって いようかな 見えなくなって
ずっと 向こうのほうまで 灰色の空
もっと 遠くには 青空が あるのだろう
それから 海が あるのだろう
ここでは あたらしい緑が 濡れている
いつもと かわらない 日が終わろうと している
わたしが いない日々も そうやって 日が 終わるだろう
わたしを ちいさくする
いらないもの きりとって しまおう
あぁ なんて いらないもの ばかりなのに
どうしても きりとれない
はじまりは いつも 小さなこと
いつか 隔たってしまったり
もっと 繋がったり
はじまりを 誰がしっていたのだろうか
戻れない としても 思わずには いられない
ただ 歩きつづける その道が
まだ 来た道から
繋がって いると
わたしが いびつなのは 知っている
誰が 歪めたのでもなく いつからか ただ おのずから 傾いでいった
この世の もののひとつ
記憶を探らなくても いくつも よみがえる その情景
どこのまちでも いつも出会えた
いま 小さな はなが 風にゆれる 一本の木に
木蓮のはなびらが おおきく ひらいて 落ちる
れんぎょうも 桜も しずかに 散る
ぼんやりと 暖かい その日も
きりきりと 寒い その日も
雨が降っている
そう 思ったら 寂しくなった
まだ 明けない 暗闇の中で
あなたに 寄り添って 脚を からめてみたり 腕の下に はいってみたり
まぁるくなる わたし
くるん って 小さくなって
それが わたし
あなたが 暗い闇の底に いる あいだ 闇をくるむ 衣に なりたい
暗くても 暖かいように 包んでいたい
あなたが 帰ってくる その日を ここで 待っている
そのために
なにも 語らないから
春の いちにち もう 終わろうとしている
あなたのところに 沈んでいる
あした そっと 拾って
きょう きょうの光を あびて 花が 咲いている
あした 光がないとしても 花は 知らない
光のなかで 咲いて いつか 散る
なにもかわらない いつもの日々
暖かいとか 寒いとか 肌で感じているあいだに
からだの どこでもないところで 季節ではない 時間が ながれている
暖かかったり 寒かったり
2005年04月04日(月) |
一瞬と永遠のあいだに |
失くしてしまうのは 一瞬のあいだ なのに 残されるものは 永遠かもしれない
一瞬と永遠のあいだに 惑いながら 今日が また終わろうとする
いない わたし
眼を 閉じて
おもいだそうね
わたし
いまも 聞こえているように 耳を 傾ける
あなたの 声は いつも ここにある
幾度となく 出会い
どこへでもなく さまようように 歩き
ときに 肩を寄せ 抱き合い
まだ 惹かれながら 別れるのだった
いま ここに あればいいのに
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