恋文
DiaryINDEX|past|will
トラムは まばらな 乗客を はこんでいる
まちは オレンジ色の ひかり
なにか 声を 聞いていたかもしれない
もう過ぎてしまった
緑のくきは まっすぐ のびて
さきっちょの 白い さやが ほころびて
赤い舌のように わかれていった
もう 咲きたいのだ
いつまでも 続いていたら いいのに
青い空を たどる
わたしを 探してね
わたしを 抱いてね
空は 暗かったから
じっと 待ってるから
あのとき そのまま
いるからね
少しのあいだ 殻のなかにいる
そっと のぞいて
また 出てくるから
まるで 夢から抜け出した みたい
夢の中の 自分を みている
あしたのことは おまえに任せて
わたしは 眠っているよ
錘は 降りるものだ
降りた先は 暗闇なのだろうか
重力にしたがって 降りてゆく
その底に 錘とともに 下りてくる
それを 待ち望む
ゆめに あそんで
わたしを みていた
おいかけて いってしまおう
もう もどってこないだろう
からだ ぜんぶ ひろげて
風の とおるのを かんじる
しばらく 聴いていよう
わかっていること わからないこと
耳を傾けて
なんにもないな と 知って
ただ きれいな 音がする
わたしの かたちになって 立っている
どこにいるのか どこにゆくのか
その海を 渡りたいと おもう
波は 銀色に ひかって いるだろう
いつか わたしも そこにいた
海の かなた
じっと みている
窓のむこうも こちらがわも
音も しないかの ようだ
女になりたいのか 女でありたいのか なんともわからない 絶望的にわからない
女になれないのに 今日も毟り取るのは 男のわたし自身
陽を透かして 葉が 金色になる
すこしづつ こずえが 翳ってくる
頭の半分ほどもある 赤い実を くわえて 小鳥が よぎっていった
いつか 空にむかって のびている
やわらかな 皮に くるまれて
すきとおった うすみどり
雨を むかえる 雨を わたしの うまれた 海につなげる
少しづつ 捨ててゆくこと
いつか わたしを からっぽにして
あなたを 迎えいれられたら いいのに
あまりにも 遠くて
聴きつづける こえ
どの ひとことも のがさないように
また はなしかける
どの ひとことも つたわるように
ぼんやり してるって いわれなくたって
あんたに わかるもんか
どんなに わたし
ここに いたいと おもってるなんて
わたしを いびつだと 知って あらがわない
だから わたしは 狂わない
そのかわり すこしづつ 歪んでゆく
いつのときも わたしであった はずなのに
いつか みつけられなく なっていた
曇り空に くすんで
はじまったばかり 秋は
まだ みどり
とおざかる 夏の うしろ姿
まだ 夜着に ばらの かおり
外は 雨 霧のように
雨に打たれた ばらのように ねむろう
腕をみる 脚をみる
それは すべて わたしなのだろうか
この わたしの 部分に
否と いえるのか いえない
あ まだ 雨の音が聞こえる
まだ 見つめている
いつか 雨になっていた
はいいろの 空に
さらさらと 音がする
いくすじもの 流れのように
|