恋文
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知っている あなたを たぐりよせる
なにが かわろうか
さがさなくちゃ
みえないところを 手でさぐり
はうように かたちを 調べ
残った かおりを たどって
わたしたち
ずっと 向こうまで 落ち葉の みちが 見えるね
灰色の そらも とても ひろい
鳥が ばさり と 枝にとまった
わたしたちの 同じもの
ことばに しなくても
かたわらにある
わたしたちの 部分だから
どうしようかな わたしは わからない
これから どうしよう
ぱたぱた
これは
さびしいだけ
ばいばい
とは いえないな
どうしたの
窓越しに かすかに 伝わってくる
わたしは 遠いところに いる
死んだ 魚の眼が こわかった
干からびた 海草が こわかった
海辺は みんな こわいものばかり だったのに
ひかる 波を 見るのが 好きだった
消してしまえたら いいのにな
わたしは きっと 嫌な顔をしていた
ことばは つづいている
ひみつではない わたしたち
そのまま いつものように
だけど すこし
わたしたちだけの ことばが あったね
落ち葉の みちをあるく
誰にも 出会わない
まばらになった 木立から
とおく ななめに 光がやってくる
てのひらを にぎりあわせて
とばりは まだ 閉じないでおこう
ひかりが 見えるだろう
頬に きりきりと 風が やってくる
ひかりに むかって 歩く
すきとおった きれいな ルビー
がりがり かみしだく
あまく すっぱく にがく
目覚めたくない と 思ったとき
どこにも いなかった
その 夢も どこか しらない町で
朝のまだくらいなか なんだか しらない町を 歩いている
波が すこし やってきて
わたしは すこし けずられる
波が また やってきて
わたしは また けずられる
だんだん ちいさくなって
それから まだ 海の底に いる
窓には 灯りがともって
道すがら ふんわり あつめる
ひかりの かけら
ひとりだけ 離れてゆく わたしがいる
わたしのなか
マセラティがどうだとか なにかの時計がどうだとか
男の会話は なんにも 面白くなくて
あくびを 噛み殺している
なにも とどまらない なんて
知らない と いう
まだ ずっとこのまま いるもん
つながっては いるけれど そこには もう いない
まだ とどまっている みたいに 立ちつくしても
夕暮れの 影の中に 隠れてしまおう
探さないでね
夜といっしょに しばらく いるから
ことばには ならなかった
すぐ近くに いたとして なにが できたろう
でも あいたいと おもった
少ししめった 地面は 落ち葉が いっぱいで やわらかだった
まだ昼まえだというのに もう傾いたような ひかりのなか いくたびも 葉は 落ちてくる
耳をすます だれもこない 空を あおいでいる
ここに いてもいいのね
だれも 拒んでないから
わたしを 拾って
わたしに なろうね
いつも 捨てることしか 考えられない
どこに わたしは 残っているのかな
なんだ 笑ってるじゃない 鏡のなか
すこし 捨ててみた
暗い通りを 歩いている
どこまで いっても
知らない顔
むすぼれた髪を ほどいている
ふつりと 切れる
からまったままの ちいさな むすびめ
まだ ほどく
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