恋文
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どこに いる
聞いていたい
声を
思い出す そのまま
なんにもない そのまま
鬼さんこちら 手のなるほうへ
だんだん 声が 遠くなって
ひとり たっている 夕暮れ
朝もやのなか 町が 静止している
覚めない ゆめのなかに いるみたい
とおい 国のことを おもい
とおい 未来のことを おもう
思い出に さかのぼって
とおくに ゆく
濡れたままの 葉っぱ ゆれる みどりの ひかり
さらさらと 聞こえる 流れになって
いくつもの 記憶に つながってゆく
わたしが 髪をのばしている あいだ
うちの 女たちは ぷつぷつと 切っているのだ
きょうも とても 静かな 切られた 髪を
集めて 捨てた
わたしには きっと たどりつけない 遠いところ
行きたいわけでは ないのに
ずいぶん 遠くに来てしまった
どうやら 帰れるわけでは ないらしい
さて どうやって どこに ゆこうか
そこにいるのは だれでしょう
問わないで いいのです
そこには 夜ばかり
いつか 朝を むかえなくなる
きょうの 夜の しじまに
花が 咲いたら 香りのなかに 歩きだそう
雨がふるだろう
わたしは 夢なかで 花を 見ている
雨のおとのなか
しみに なってゆく みたい
なんでもない のに
なんでもない ことが
ひろがって ゆく
街は 記憶のなかの ように くすんでいる
なんにも しらない と 言ってみる
あぁ、なんて 知ることが 多かったのだろう
もう 忘れても いい
あ ぐらぐら はずれてく わたしは いいなぁ と おもう
いつも と いうことは きっと ないことで
いつか と いうことを こころまちに している
いつも 雨に濡れたように くらい どこかに 踏み迷った ような 朝
もうすぐ その街は 香りにみちるだろうに
もう 秋をつげている ひかりを 透かす
いまでも 香りをとどめている その一枝を 目の前に みるように
夕暮れの ひかり 葉っぱが ゆれる
ひかりが はんぶん かげが はんぶん
まぶしさも はんぶん
ひまわりは 立ち枯れていた
とうもろこしが 包まれている
誰も いない
まっすぐ 道がのびている
足にからまる 藻が こわかった
ながれてゆく 砂が こわかった
とおくの 海の底
しずんでいる わたしを おもっていた
まだ だとしても もうすぐ だとしても
いずれ きえてしまう そのときを いつ しるだろう
立ち止まってしまうと もう 進みたくなんかない
降りかえっても 遠い道
眠りに落ちる まえには とりとめもなく 考える
それは 夢にすらも あらわれない
その渡り廊下から 街が見渡せる
光が ガラスを透って 溢れて
そのまま 消えてしまおうか
しばらく 沈んで それから
上になったり 下になったり
くるくる ただよって いよう
天も 地も なんにもない
すこし 空は 灰色だけど
草地は みどり
牛は 草をはんでいて
森は ずっとのびている
ねむたいような 陽射し
草のにおい 花のにおい
ねむりに おちるまえに よみがえらせ
ゆめに たずさえて ゆこう
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