恋文
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トンネルを 抜けだしたように
きらびやかな ひかりが 入ってくる
窓は くもって
騒がしく 乗り込んでくる 人々を見やる
濡れた窓を ぬぐうと くらい路面に
ひかりが 落ちていた
雪がふる
季節が ふつうに 移り変わるように
なにも おなじまま とどまっていない
夜には たくさんの音が 聞こえる
ときおり パイプの とおいところで 水がながれ
風のように 空気は 動いてゆく
どこかで なにかが 崩れて 突き当たり
そうして 今日は 絶え間なく つづく 雨の音
窓の外には 大きな木
木の向こうには 灰色の空
きょうの雨は とても静かに 降る
窓から見える 濡れた舗道
雨のなかに 色とりどりの 電飾がひかる
しずくの伝う 窓のむこうに にじんで
思い出のように 流れてゆく
まっすぐ 木は 立っていて
葉は もう 落ちてゆく
空から ひかりは おりてくる
枝には まだ 葉が 透きとおっている
朝は 霧のなかにいる
覚めなくていい もう少し
あとで そとに出よう
身にまとう 霧は 薄くなるだろうか
朝が 暗いから ずっと 暗いように 思ってしまう
いつのまにか 空が 青く なっているのにね
目覚めたばかりの 街 灰色の空
通りの先が かすんで
黙って 歩く
傘をさしていても いつしか 濡れてゆく
滲んだ 街灯のひかりのよう
まだ残る 緑も 明けない 空のした 夜のつづきに 眠っている
灯りが 通り過ぎて 地面の草が ほんのり ひかる
いちにちが はじまる
だれもが それぞれに じぶんの 時をもつ
まじわり はなれ また かさなり
いくすじもの ながれのように
光も 影も まじりあって
木漏れ陽が まぶしい
みんな とりどりの 色に なり
行くさきに あふれている
丘の上の 林から ひかりは 降りてくる
木の葉の 色になって
目の前に 白い道が 続いている
焚き火の においがする
どこかで 落ち葉を焼いている
彼岸花の 赤い色を 思った
舗道を埋めた 落ち葉も
木の枝に 揺れる葉も
空のいろに とけこんでゆく
目覚めても もう一度 逢いにゆくよ
目を閉じる
落ち葉のつもった 舗道を歩く
いちにちの はじまりと
いちにちの おわり
どこにいても 時は過ぎる
懐かしいような 夢をみる
とけ込んで しまいそう
色づいた木立の上 空を 切り取って 伸びてゆく
届かない 彼方へ
暖かい いちにち 落ち葉を 踏んで
川は しずか 白鳥が やってきて
どこにも いかない なんにも かわらない
消えてゆく ひかりは 懐かしい
もう 誰もあるいていない 小道の 向こう
見えないから 知らないから
推し量れない ものが こわい
動き続けている あいだが いい
独楽のよう
木漏れ日が 漂うように 揺れる
ぼんやり 行きどころのない 気持ちを 抱えて
葉っぱの 影を 踏んでゆく
光も 影も まざって
道が ずっと むこうまで
続いている
虹の下を くぐろうと しているあいだに
遠くに きてしまった
たどってきた みちすじに おいてきた
目印を
また たどってみる
灰色のトンネルを 抜けてゆくように
朝靄を とおりすぎる
薔薇の花は もうしぼんで うなだれている
叩きつけるような 雨が 降るように
風も 同じように 吹く
木も草も たわみ
髪を打ちしだいて 駆けてゆく
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