恋文
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いじけようが、拗ねようが。 いずれ時は過ぎてゆくではないか。
知らない未来は 誰にも 知られようがない
遠くに、なんにもなかったら。 なんだか探してみよう。
探してなんにもなかったら。 その時には、不貞寝でもしてみようか。
不貞寝をしているあいだにも。 どんどん、時がたっていって。
いずれにしても 未来は知られないままで
黴がはえたからといい。 だれに文句がいえようか。
もう一回でも、何度でも。 起き上がるしかないではないか。
どこまで いっても
どこに たどりつくのか
わかんないもん
鐘のおとは
知らないところ
太陽も 凍えている
まっすぐ 見つめても 白い
枯れ果てた 小道に 鳥の声もない
じぶんの 息だけを たよりに 歩いている
遠くまで 白く かすんで
取り残された 石組みに
もう ひかりが 冷めてゆく
鳥の声も ない
さまよっている うちに
いつか
覚めても 同じ くらさ
少しづつ 遅れてゆく
同じような 毎日なのに
からだひとつ 後ろに
いる自分
どこか はずれているような いちにち
どこからか 焚き火の においがする
小さなともし火のように 赤い実がなっている
葉を落としてしまった 木々の向こう側が 遠くまであかるい
夏に白く光っていた 道を今日も歩く
道はまだ まっすぐに白い
凍えるような 風に 木々は ざわざわと鳴る
かすかに 遠くから 鳥の声
目を閉じたら うかぶ
どの町にも あった 街灯のしたの ちいさなあかり
いつの時にも あった
鈍色の空も 隠れてしまい
わずかな 灯りのなかを 歩く
頬に ふれる しめった風
いくつかのことを 思い いくつかのことを 忘れ
なにも変わらなかったとしても 一日は終わる
思ったよりも 変わってしまたかも しれない
曇りガラスの 向こう側にも ちゃんと 世界はある
雨のあがって 水溜りに 街灯のひかりが きらめいている
空の色も 町の色も おなじ灰色
わずかに残った 木の葉も やがて落ちる
休息の時
霧のような 雨がふる
空をよぎる 架線に
影絵のように 鳩が 寄り集り 並ぶ
一羽 飛びたち また 誰か やってくる
ふたつ 白い鳩がいる 黒い列の 真ん中
もう きっと 逢うこともない
その 歌声を くり返し よみがえらせる
そうして まだ 歌えるよ
どこまでも 続いているから
満ち足りていた 眠りのあと
脚は まだ 熱を おびて
差し出す 暗闇のなか
とぎれない 今日があったと いうこと
また 明日に つながるであろうと いうこと
思いを馳せる
見知らぬ人々が たたずみ 歩き
町の風景も いつか 知らない
どこに続く この道
渦をまいて 落ち葉が 舞い上がる
やがて 雨が なだめてしまう
濡れたままの 落ち葉
すれ違う 誰も 知らない 顔のまま
道は 白く ひかっている
枯れてゆく 草むらに
まっすぐ 立っている 一本の木に
紅い実が ついている
足元に 落ち葉を 踏んで
傾いた 陽のひかりが もう 冷めてゆく
特別ではない 一日の午後
いつまで こうして いられるだろう
向こうがわに ゆきたい わけではない
岸辺に 打ち寄せる 波を 見ている
ずっと 遠いように 思った 向こう
もう 夢のなかに 帰ってきてしまったのだろうか
だれも かれも わからない うすくらやみに
いつしか 遠ざかっていった 音さえも
夢のなかに 閉じこもって いられないから
起き出す まだ 夢のように くらい
振りかえって はじめて 物語になる
いまは ただ 行く先を 見つめている
霧のなかをゆく
いつか 晴れたとき
どこに 立っているか わからないとしても
明けてゆく 空は まだ群青色
川面に 波が わずかに 光る
また 一日が はじまる
流れてゆく
かたちは もう かたちではない
水底で ゆらり ゆれる ひまもなく
そんなに 早い 流れのなかに
なにも かわらない
なにも
過ぎて ゆけば いい
そのまま わたしは いるだろう
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