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ちいさく 束ねる
おおきく 束ねる
髪と いっしょに
わたし自身も
ぽつねんと 部屋の なかにいる
影が たしかな 場所になって
そこにある
歩き回ってみる
どこにも 影がある
道は どんなに 入り組んでいるだろう
失いつづけるあいだにも 出会うことはないだろうか
しばらく 居場所がある あいだ
ここは ふんわり 心地よい
ひとりで いたって まんまるく
巣立たなくたって いいもん
空が あかるくなり 鳥のさえずりが もどり
季節が 巡ってくる
真っただ中に 立ちすくんでいる
雨が はらはら かかるあいだ
空は まだ明るい
鈍色の空
川面を 見ている
繰り返し
やってきては 去ってゆく
わたしも
足元を 見ながら ぽつり ぽつりと ゆく
目をあげても 先に 曲がり角が 見えるばかり
ひかりが 変わると
すがたも みんな 違ってみえる
一日を 静かに 終えよう
馴染んだことを いつものように
なにも 変わらない
わずかに すれ違ってしまう
大きな 隔たりではない
手探りで あったとしても
触れるものに 導かれて
歩んでゆく あした
ひりひり 手がかじかんで いる
丘のうえから 見渡す 向こうには
まだ 雪を残したままの 町並みと また 丘が 見える
くだってゆく 道すがら 何も 考えたくない
小鳥の さえずりが 戻ってきた
振りかえる 自分が いなくなる と
いつだって あるかもしれない
ふと 立ち止まる 街角で
向こう岸は その すぐ そこに 見えるのに
誰か とつぜん 消えてしまう
それを 知らないまま
時が たってしまう
こんなに 広い 世界に
でも だから まだ
出逢える
記憶も アルバムの写真のように なる
ぷつんと 切れ端の情景の まま
色あせてゆく
手繰り寄せるのも いつか 覚束ない
間違えたことを やり直し
欠けたものを 補おう
何度でも 出逢おうね
風が ほどけてしまった
ばらばらに 飛んでいってしまう
わたしを押してくる それは 切れ端なのか どうか
大きな手のように 強いままだけど
あなたが 生まれるまで
さかのぼり たどり
どこが 始まりだったのだろう
と、言えもしない
だから これは 恩寵というのだろうか
ぼんやり 影でいい
知られないまま いっしょに いよう
特別なことが なくてもいい
つつがなく 過ごすことが できるなら
とおくに おもいを馳せる
どう 過ごして いただろうか
長いあいだ 見ていなかった
刷毛ではいたような 朱色の帯に
重なる雲が ひかる
どんどん 引き寄せられるような 気がする
目覚めても 夢のなかに 置き去りには してこなかった
すこし 悲しかった きもちは
どこにでも ある
記憶は 夢に似ていて
少しづつ 曖昧になってゆく
ひとりの時間に もどる
遠くからの 音を聞いている
そのほかは 自分の息と 耳元を過ぎる 凍った風の音
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