恋文
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目が 開けられないくらい まぶしい 雪面を 越えて
鳥たちは 群がっている
空も 遠くまで 透きとおって
影もない
切りはなれた 時間がすぎる
その合間に 交錯する
いつもの 時間も
みどりのなか
まだ 残っている 雪
とおくまで みどりと
まっすぐな あるいは まがりくねった 道
かわってゆく みどり
風が吹けば 風とともに 揺れる
散ってしまえば ふわふわと 漂うだろう
風に揺れる 葉叢から 小鳥が 飛び立ち また 帰ってくる
そのたびに また 繁った葉に
ひかりが ゆれる
街角に ハープを弾く 人がいる
若葉を 透き通った 午後の光
雨のあとに
しずくといっしょに こぼれるような
花のかおり 草のかおり
振り返り 振り返り 歩いてゆく
おぼろげな 行く先へ
いちにちは すぎる
なにも 思い煩わなくとも
冷たい風も 歩いているうちに 心地いい
花が散って 降りかかる
みどりの野
風のなかに まっすぐ 立っている
たわんでも
雨混じりの 風と いっしょに 吹き惑う
髪を 梳かすと
洗面台に ぽつりと 落ちた
花弁
舗道を しろく 散り敷いて なお
ふたたび 散らされ 流れてゆく
こんなに 真っ盛りの花
ぽつんぽつんと 湧いて出る 不毛な考えは 隠してしまおう
いつか いっしょに 散るだろうか
霧が晴れたら どこに いるだろう
目をこらしてみても ずっと霧の中
流されてゆく
ひとりが ひとりでいるあいだ
ぽつりと いるわけではない
遡り つながってゆく ひとりのきもち
馳せる そのむこうに つながってゆく
こんなに 春は いちどきに やってきた
小鳥が からだの十倍もの声で さえずっている
まっすぐな 光のしたで
みどりの まんなか
はなの まんなか
はるの まんなか
ことりが いる
ひそかに かおるあいだに
はなになる
とげも まっすぐ のびた
連翹の 向こうの空
ずっと ずっと 遠い空
行き惑ったとしても
それは 霞のように
春は 春
ときに われにかえり
自分で 自分を 忘れてしまっていると
気づく
まっすぐ まっすぐ
行けたらいいね
失われてゆく わたしを 越えて
小道を 歩くと 花の かおり
このまま 歩いてゆきたい
こんなに 明るかったかしら
いつのまにか 鳥のこえも
すっかり 春のようす
迷子になったように まわりの 景色がかわる
ひっかかったものが 立ち去らない
ぱちんと 音がして フィラメントが 切れる
電球のなかに 閉じ込められた 虫のように
からからと 揺れる
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