恋文
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花のかおり 緑のかおりのなか
風も しずかに 流れる
わたしだけで いいかなぁ
遠い 海を おもう
空や 川が
海の 匂いを 連れてくる
いまにも 降りだしそうな 雲ゆき
景色も 空の色のように 見える
わたしも おなじ色になる
子供達の 遊ぶ声が 聞こえなくなり
まだ明るい ひかりのなか 誰もいない
ひそめていた息を 吹き返すように
草木の かおりがする
隔てているもは 自分自身だろうか
黙り込んだまま 外を見る
熱気をはらんで ただ 明るい
わたしのなかの いっこに 自分でいる
どこにも ゆけない まんなかは
ただ さびしいだけの ひとり
緑に 満ちて 光に 満ちて
鳥の 囀りに 風が 渡り
そうして 影にも 満ちて
では どこに 欠けることが あろうか
夜のあいだに 通りすぎた 嵐が 窓に 残していった
朝のひかりに 光っている
降り注ぐ 日差しも 翳ってゆく 空も
ひとしく 今日のなかにある
海よりも 時のほうが 隔ててしまうのだ と いうだろうか
逢いたいひとには
海が 隔ててしまうのに
時は 忘れないあいだ 止まっている
眠りと 目覚め
一日が 終わり
知らない明日へ また近づく
熾火の色の 雲が浮かんでいる
もうすぐ 冷めてしまう
ほんの ひととき
あまり 変わらなかった
想い出は そのまま
初めから やり直せそうな 気がする
鳥の声を聞いて 風の音を聞いて
見えるものは 花や草や木や
そんな中に ずっと いたい
行方は 定まらないとしても
過ぎてゆく
始まりのために 終わる その いちにち
怖くなった とたんに
たちまち みんな こわいものになる
鏡の自分に 目を合わさずに 通りすぎる
雨が 連れてくる いくつもの記憶
空のいろのように けむっている
雨の音が 聞こえなくなり
ひかりの 消えてゆく 空に
うっすらと ばら色の雲
わからないことのなかで あれやこれや 考えている
なんにも でてこない
ぼんやりする
うろうろ 歩んでゆく 道のりは
まっすぐではなく ぬかるみ 木は倒れ
むこうに 見える 丘は ずっと前から じっとしている
草も木も 生き物の 匂いがする
雨が また 近づいてくる
足は ゆっくり 進む
気持ちだけ ずっと 先にいってしまうから
もつれてしまうのね
あれやこれや 悩んでいるあいだ
前を向いているのだろう
いずれ 知らない その向こうは
ずっと 向こうにある
うずくまっても また 立ち上がれるなら
目は まだ まっすぐ 前をみていよう
こんな とおい ひろい ところ
生きているよね 鳥たち
風は まっすぐ 突き当たってくる
波は ざんざん 荒れている
ひらひら ふわふわ
飛んでいるね 浮かんでいるね
木陰は みどり 風が きらきら 光をちらす いっしょに 木のかおり 草のかおり
鳥たちは 木陰に潜んでいるだろう
風が散らしてゆく 花びら
舗道で まるく踊る
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