恋文
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何も変わらない わけではない
けれど なにごともない 毎日がすぎる
動いても 影もないみたい
静かすぎて
光は まっすぐ
テーブルに 影をつくる
その影も まっすぐ
いちにちの 長さ 一日のまま 暮れてゆく
何か したような
しなかった ような
おなか いっぱい わたし 皮袋に なったみたい
でも、 人って ふだんから 皮袋なんだよね
埋もれたものは
持ってゆけるだろうか 消えてしまうだろうか
もう 見つかることだって あるだろうか
外に 一歩 踏み出す
顔に突き当たるように やってきたのは 風ではなく
青いような 花の香り
暖かさが 戻ってきて
いつでも 降り出しそうな 雲の色は
そのまま 町の色のように なる
風が しぶきのような 雨粒を 乗せてくる
季節が 後戻りをする
風のなかに 立っているあいだ
わたしは 魚なのに 海が 怖い
怖いけれど 懐かしい
寂しい気持ちの時には わたしは 海のようになり
漂う 波のあいだ
音や 影や
触れられないものは
いつも いい
こどもたちの 声が消え
雨のおと ばかりになる
今日の 白い帳が おりる
知らないうちに 消えてしまった
すり抜けて 去ってしまった
海に 帰っただろうか
なにも起こらない 毎日は
夢から目覚めて また 夢にはいるように
いつか 目覚めたら
消えてしまうだろうか
ブラインドの隙間から わずかに光がはいる
雨の音も かすかに
思い出のなかに 座っているみたい
切ってもらった 髪は 捨てました
肩の上で なんだか たよりない けれど
くるんと 束ねると たわしの先の ようです
まだ 胸まで とどかない 髪だけれど
また 切ってしまおうか
もう いっかい そこから 始めるために
見慣れた 風景も
いつか 見られなく なるだろう
思い出のなかに また ひとつ 残る
こんなに早い 流れのなかでも
よどみで くるくると 回っている
いずれ また 流されるとしても
ここと どこかで 時間の流れも 違うかもしれない
まるで 知らないところを 思ってみる
雨と 雨の あいだに 過ぎてゆく
晴れ間の 空にも 雲のかげ
ささやきのように 降る雨が
一日を 見送ってくれる
夜の音に 溶け合って
どれほど たくさんの 時間だろうか
生きている あいだに
まだ 逢えることが
子供達の声が 聞こえる
ときどき 妬ましい くらいに
明るい
泣いていたって
からだの かたちも はたらきも
自然のままに あるから
うとましいことも ある
眠る間に 逢いに行った
それでも 久しぶりだったのだ
あまり話せないうちに 目覚めてしまった
こんど いつ逢えるだろうか
滑り落ちてゆく 記憶のすき間を わたる
遠く 影のように まだ ある
花のかおりが 入り混じって 夜の匂いになる
少しづつ 暗闇がひろがる
丘の緑に 繋がるように 雲が覆っている
雨が降ってもいい
鳥のさえずりも 混じって
囁くように 降る雨に
少し 濡れていようか
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