恋文
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鳥が 窓の外を横切って行った
ブラインドの隙間の 途切れ途切れ
セミが鳴き始める
じわりと汗ばむ
静かな 音に満ちて
雨になる
木もない こんな高いところ
ベランダの フェンスで せみは動かない
何を見ている その眼
眠れない夜に 思い出を 数えあげる
その同じ時に 戻り
夢に 見るだろうか
木槿の花が ぽろぽろ 落ちる 木の下
真昼の 夢を見る
話し声も 車の音も いらない
夜の街のなか
カーテンが 風に ふくらむような
小さな 日常の 不確かさ
風の通る部屋で 寝そべっている午後
なんにも 考えない
風が運んでくる
音だけを 聞いている
また 眠くなる
大きな枝振りの 槿に出逢った
雨のなか 傘の陰から
異国の町で 出逢った 槿も この槿も
なにもかわらない
山並みは 灰色に 煙っている
街の 音を聞く
風と入り混じって
曇り空のした 風のなか
間違いもなく 過ぎてゆく きょうの一日
そこにも
いくつもの 会話の輪
ふと 窓の外を 見やる
夏の光と風
夕日の照り返しが 窓を光らせる
ビルの間を バスは のろのろ走る
家まで もう少し
ふんわり茂った 木がゆらゆら
遠くの山も面 いっしょに 揺れる
眠くなる 昼下がり
ちゃんと 緑になるよね
ベランダの 手すりに這ってゆく
みんな 緑になりたかった
また 今度ね と 約束だけ
まだ残っている
その町にも 毎日がある
親密になれない 暑さ
懐かしい 雨
影に沿って歩く
光を透かして 茂った木々を 見上げる
熱気になか
誰もいない 夢の中を 歩いている
夏の夕暮れ
光が焼ける
オシロイバナの 咲く軒先
日が照り返す 夕方
風が 通り過ぎる
緑は 揺れて
光が 散らばっている
群青色の山 それから空
風の音が とてもすごくて
わたしも 連れていってね
慣れること
知らないうちに きっと
こんぺいとうを ころがす
痛くない とげ ほろほろ くずれる
熱気を閉じ込めて かすむ山並み
日差しの 舗道に 歩み出る
風を伝って
どこかに 行きたい夜
思いもかけず 乗り込んでくる
大勢の 学生たち
海の照り返しよりも 眩しい
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