恋文
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カーテンが隔て 窓が隔てる 向こう側の
ここにある ここではない 世界の
息吹を 膨らませている
今日も
遠くの国道から 響いてくる
音に 押されるようにして
浮かぶような 沈むような
なにが悪いと 言えなくても
沈潜する
得体の知れない なにか
木々の ざわめきに 紛う
すずめたちが 木立の暗がりに 帰って
空は ゆっくり 暮れる
風といっしょに 入ってくる
虫の声だけでなく 街のざわめき
きょうの終わりを 迎える
静かな雨は 好き
だけど 激しい雨も
風が 運んでくれる
しぶきを 受けていようね
取り残されたような 気分になる
秋の気配の 夕暮れ
入ってくる
風のおと 雨のおと
眠くなる
ここではない 夢をみる
遠くでも 遠くでなくても
さっきまで 鳴いていたのは せみ
いま 鈴虫が 鳴いている
夜になる
波を分けてゆくような 音を聞く
山裾の この街に
雨が 運んでくる
もう 秋の 声になる
窓を 開けたまま
雲に すっかり 隠れてしまった
山並みから 風を受け取る 雨の街
ゆらゆら 水のなかの ひかり
時間から 離れてしまっている
ゆらゆら 水面に浮かぶ さるすべりの花
蜂が行き来する 陽射しのなか
全部の わたしのために
歪め 撓め
切り 削り
まっすぐ ではないけれど
わたし
へびが 渡ってゆく 川の流れ
日射しに ぬるむ水
子供たちが 遊んでいる
川の流れは きらきら光る
緑の岸辺に 日は照りつけて
雨を待つ
せみの声 聴くばかり
さるすべりの 並木道を行く
空の青
音だけ 響いてくる
空の雲は 厚くなって
それでも どこか遠く
のどかな 午後の日
夕日といっしょに
沈んでゆきたい
山裾の
その向こうのほう
わたしを 夢見る
夢見る わたし
昼下がり セミの声
真っ白く 切り取られた 陽射しのなか
真昼の 夢です
さるすべりの 並木道を
みんな 歩いてゆきました
見知った人は いたでしょうか
暑さに 酔って 歩いているよ
空は すぐ 暗くなって
雷の音が 聞こえてくる
みんな ざわめきの まんなかで
お祭りの ざわめき 遠のき
雨になる
山並みの上に 重なる 雲の峰
雪のような 空のひかり
雨になり
午後の時間は なおさら
ゆっくりと 過ぎる
少しずつ 熱は 冷めていった
風のなか
まだ 熱をもった 身体から
一日を 終わろうとする
冬の夜にも
夏の夜にも
街灯の光は 冴え冴えとして
夜の間も 消えない 音も光も
どこか だれか
生きている
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