恋文
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少しづつ 暗くなってきた 空の色
雲がかさなって
もつれた髪を 梳る
空気の重さ
熱をはらんだ 風
悪い夢のような 夜
カーテンが ふんわり ふくらんで 揺れる 夢に誘うように
セミが転がって コガネムシも転がっている
夏の終わりの舗道
夕焼けの名残りを 風が冷たくなるまで 見ている
前触れもなく
消えると思う
音もない
クリーム色の 月が 空のまんなか
虫の声を聞いている
雪の山脈のように 横たわっている
花びらが 落ちて
実がふくらむ
頼りなさそうに 空にかかる 月 ビルのあいだ
昨日まで 六つに切っていた
りんご と トマト
四つに 切るゆうがた
小川のせせらぎ 虫の声 羽音
風といっしょに 交じり合う 光と影
その場所に その時間
考えたくないことも たくさんあるので
なんにも 考えないときも ある
世の中では みんな 戦争を始めたいようだ
だれか わたしをすきなら
わたしは そこにいる
風のなかで 髪を乾かすと
ふんわりする
わたしの からだも
ふんわりとする
ヘアクリップで 髪を留める
思い出も いっしょに とどめる
悲しい歌も きょうの一部で
悲しむことは ないのよ
一日のうちだだから
髪をおろす
背中にかかる
むずがゆさ
もう見慣れた 町並みだけれど
ふと感じる 異物に詰まる
槿が咲いていた
たくさんの場所で 出逢った
音を聴く
雑音であっても
一日の終わりに
夕焼けが消えて
稜線も消えて 夜の一部になる
動物のかたちの 雲が流れてゆく
青い森のなか
万華鏡をのぞくように
くるくる変わる
音のるつぼのに せみが啼いている
夜の熱気が ほどけて
白い月が 天のまんなか
思い出は 遠くなるほどに 静か
かの地の 夏の川原や 林の小道を 思う
眠れない夜も
深い眠りのなかにいる 誰かと出会っている
記憶をたずさえて 朝の声をきく
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