恋文
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月をみない ひんやりした 空
人工の音をきく
ずっと会っていない そんな名前を 探してみる
すこし ゆがめてゆく
落ちないように
進みつつ ふり返る
くらがりの道
やがて 雨が近くなる
そんな気持ちの色
砂浜はくろくて 海もくろくて ひかりも やがてくろくなる
とんびが舞う 風の強さ
若葉のかおりがする 町のなかでも
この町には いつも 風が吹いている
不安は 肩をならべて 歩いている
寝付かれない夜の ゆめうつつ
いつか カーテンのむこうが 明るい
痛みは いつも一部になる 不完全な からだ
みどりばかり 鳥の声と 風の音と
ゆっくり歩く
木の枝が なびく
細い幹も ゆらゆら 揺れる
ざわざわ 音を聞いている
風に逆らって 歩いてゆく
雨にけむるから 見えるようで 見えないような
行く先まで
おぼろげな 欠けた月
風が運んでくる 生々しい 植物のにおい
朝から 日差しが眩しい 目を細めて 信号機を見上げる 傍らを 自転車が 駆け抜けてゆく
楽しくもない朝 ゆるゆると からだを起こす
雨が 降り続いて
夜に なって
まだ 降り続く
いつも 風が吹く
今晩は ごうごうと鳴っている
窓をあけると 雨の暖かさ
固いものや 柔らかいものや
起伏や 塊や
異質なものの いりまじった
小さな 起伏や わずかな ひっかかりや いくつも いくつも 越えてゆく
明るい街のなかを 風が通ってゆく 街路樹も 旗も 音をたてている 人は 黙って歩いている
木々の揺れる音
山の色は 濃くなったり 薄くなったり
金柑の 輝いている
噛むと ひろがる色
遠くには 海がある
眼下の町
風をきく
ゆがんでゆく からだは
どうやって もどるのか
ゆがみを たどることも しらない
寒さを まとう 旅にでる
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