恋文
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どこか 変わってゆくのかしら
もやもやが からだの中に 滞っている
沈んだ村は きっと朽ちているのに
干上がった湖に
骨のように さらけ出された 木の根
遅れてきた蝉が 最後に 啼きつづけている 谷の木立
人恋しくなる 風の冷たさ
石段を降りる 道すがら
金木犀が 香って
木立のどこにも 見つからない
花をおもう
季節が 変わってゆく
風が 木々を揺らす
風が 荒れているけれど
雲の空もいい
彼岸花と 赤とんぼ
稲穂のあいだに
季節が 駆け足になっている
台風の跡が 歩道のあちこちに 残っている
抜けるような青空
子供たちの声が 戻ってきた
雲のあいだが まぶしい
大雨のあと 虫の声が ひときわ高い
そろそろ 死を考えよう
禍根のない 死を
行き交う 車の音ばかり
虫の声に 混じる
夜が更ける
いろんなことを 考えるのだけれど
言葉に表すことが できなくなってきたのか
絞り出すにも カケラのようなものが ぽろりと 出るばかり
通りの明かりが 懐かしいような 色になる
夕方の 街路樹に 小鳥たちが 騒がしい
日が短くなった
山にかかる 雲と空の 重なりがいい
どこかに 行きたいと思う
青空ばかりや 雲ばかりや
空を見上げる
案じなくても 季節は移る
虫の声を聞く夜半
水浸しの歩道に 幾重にも広がる輪が 跳ねている
みんな濡れそぼる
たくさんの
悪意と 善意が
あって
だれもが 公平に
受けるわけではないこと
雲の流れのように 形をかえながら 流れてゆく
道路のくぼみに ぽつんと 取り残されて 曇り空を 映している
熱風に 蟻が這ってゆく 地面も熱い
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